こころひとつ 3
俺の名前は二葉・フレモント。
今日、偶然乗り合わせた電車の中で気分が悪そうにしている男、池谷忍を見つけた。
彼の窮地を助けた俺は、まだまだ気分が悪そうな彼を連れて、小沼桔梗の家までつれてきた。
このイトコの小沼桔梗ことキョウは、実はあまり同学年のダチとはつるまない。
それは人の心に聡い彼がいつも別れてしまうことを先に考えてしまうだとか、あいつが美人なせいで相手の方がダチとしての距離を取れなくなってしまうなどのげんいんがあるのだが、ただ、俺にわかることは、キョウはウソをつかないということ。
彼は本当の言葉だけを俺にくれる。
それで十分だった。
そんなキョウにしては珍しく、忍をとても気に入っている様だった。
そして、俺に取っちゃあいまこうしてここに、池谷忍がいることだけでも・・・夢の様だった。
今年のハイスクールの入学式で、新たに外部から入ってきた生徒の中でも、池谷忍はあらゆる意味で抜きん出ていた。
まず、最初のテストで彼は学年トップになった。
しかもその彼の容姿は、スッキリと美しく、その体のパーツはどこを取ってもきれいだった。
それで注目されないわけが無い。
みんなが彼に何らかの形で注意を払っていたのだ。
何よりも気になったのは、彼のその近寄りがたい、まるで人を拒絶しているかのような態度だった。
何故かそのたいどは、かれの澄んだ瞳にふさわしいと思えたものの、とても痛々しく感じられて二葉は彼を見るたびにこころをざわめかせた。
選択教科が重なったときは、彼の後ろの席に陣取って授業中ずっとみつめていたし、彼がどこにいるのか、俺はいつも気になってしかたがなかったんだ。
そんな自分の変化が信じられなかった。
だって俺はそれまでずっと、キョウのことが好きだったんだ。
キョウには恋人がいるけれど、自分のものにはもう絶対ならないと分かっていても、彼のことがたいせつだった。
そんな俺が、出会ったばかりの話した事も無いような奴に・・・・引かれている。
一体どうしちまったんだ?