こころひとつ 2
格好悪いところを見られてしまったのと、気分が悪くて吐きそうなのとがあいまって、俺は再び顔をうつむけた。
お礼を言いたいのに、声を発する事ができない。
自分の目に、じんわりと涙がたまって行くのを感じながら、それでも何か言おうと二葉のほうを見上げる。
俺の身長は170センチ位だから、長身の二葉を見上げる形になってしまう。
それにきづいた二葉は、少し屈んで俺の身長に目線をあわせてくれた。
少し考える風だった彼は、俺の目をじっと見つめてこう言った。
「この辺の近くに、俺のイトコのいえがあるんだ。そこで少し休んでいかねーか?」
どうしてほとんど初対面と言っていいような俺にこんなに優しくしてくれるんだろう?
ぼんやりと二葉の顔をみつめていると、二葉はまるで何かを堪えるかのように目をすがめた。
さらに腰を屈めて俺の耳元に口を近づけると、そっとささやいた。
「いつまでもそんな顔してっと、おそっちまうぞ・・・」
びくっとして体を引くと、二葉はウソだよっと言って笑っていた。
俺は今のでびっくりして涙が引っ込んでしまった。
多分今のはショック療法ってやつだろう。
だって本当にびっくりしたんだ。二葉・フレモントにそんなこと言われるなんて・・・!
少しからだがほてってくるのを感じながら、とりあえずお礼を言おうと口を開いた。
「あのっ、本当にありがとうございましたっ。」
「いえいえ、どーいたしましテ。それよかさ、マジでいかね? 俺のイトコの家。オマエどっか行くとことかあんの?」
俺は少し迷ったけど、二葉のイトコの家とやらに行かせてもらうことにした。
なんとなく、このまま離れたくなかったんだ。
二葉・フレモントに興味があった。それに、まだ吐き気がおさまっていなくて、胸が少し苦しいみたいだった。
そのまま駅からタクシーに乗って小沼桔梗と言う二葉のイトコの家へとむかった。