投稿(妄想)小説の部屋

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No.496 (2003/05/26 20:14) 投稿者:レジェン

アシュレイ・ロー・ラ・ダイ

 桂花を天守塔へおくりだすと、柢王はもう一眠りするために寝室に向かった。昨日から魔族討伐に出かけ一睡もしていない。桂花がいるのなら起きていただろうが急遽、彼はティアに呼び出しを受け、出かけていった。きっと俺に寝ていろということなのだろうな、と、だれにともなく呟いて柢王は寝台に倒れこんだ。しばらく思考を停止していたが、室内に流れ込む風に目を覚ました。
「アシュレイ?」
 柢王は上半身をおこして窓に腰かけた幼馴染に怪訝な視線を送った。
「いつきたんだ?」
「ついさっきだ。」
 こちらをちらりとも見ようともせずにアシュレイは答える。
 どうかしたか? と聞く前にアシュレイが口を開いた。
「低王。」
 こちらを振り向いたアシュレイの、常時ではありえない眼光の鋭さに、柢王は一瞬息を呑む。
 まるで、鬼神! その逆鱗にふれる者を容赦なく叩きのめす。同じ元帥の位を預かる身でありながら、柢王はその壮絶な瞳の前に膝を屈指そうになる。それをこらえ、柢王は平静を装って尋ねた。
「なんだ、姉上にでも怒られたのか?」
 わざと軽いジョークにしたてようとするがアシュレイはのってくれない。困った柢王は、しかたなくあいての、幼馴染の出方を待った。さきほど柢王を跪かせたあの視線は、今は虚ろな空虚をみつめている。
(なにを考えているんだ?)
 ふれたら爆発でも起こしそうな空気の中、柢王は緊張の面持ちでまった。こんなアシュレイは初めてだ。
 やがて、アシュレイが再びこちらをみた。その目は、ゾッとするほど虚ろで何の感情もよみとれない。
「柢王、お前なら、どうだ?」
「・・・なにが?」
「お前なら、あの魔族ヤローが、桂花が、死ぬとわかっている場所にいかなければならない時、お前なら後で報告を受けるより、先に話していってほしいか? 引き止めれないとわかっていても。」
 真正面から必死に繰り出される質問に、柢王は一瞬驚いたが、ついで淀みなく答えた。
「俺は、前に桂花に約束させたぜ? 頼むから、いきなり目の前から消えたりしないでくれ、もし消えなくてはならないのなら、一言いっていってくれってな。あいつは、はい、と答えた。」
 とても、嬉しそうに語る柢王をみて、アシュレイは「そうか」と呟いて窓に歩み寄った。


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