投稿(妄想)小説の部屋

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No.431 (2002/04/07 02:22) 投稿者:モリヤマ

ダーリン・カムバック 2

(2年半前に書いた前作で(…昔ですみませんっ)、一樹さん所有の「金●先生」ビデオの虜になった忍。23才で二葉とラブラブ賃貸マンションで暮らす今も、その趣味は変わっていません。…という(勝手な)設定のお話になっています。/汗)

「ただいま」
 3日振りの声に、俺は喜び勇んで立ちあがるとマイダーリンを出迎えるべく玄関への一歩を踏みだし…かけたところで、思いとどまった。(セーフ!)
 ………待て待て俺!
 そんな甘チャンでどうする。
 そんなんだから、いつまでたっても忍にいいようにあしらわれたりするんだ。
 忍の帰りをいまかいまかと風呂にも入らず飯も食わず、あまつさえトイレも我慢して、じぃぃぃぃぃっっ…と待って待って待ちつづけ、挙句尻尾振ってお出迎え♪ …みたいな、そんな男が廃るような真似、誰が、誰が、誰がっっっ………、
「疲れたろうっ? 忍」
 って、思うそばから玄関より移動中の忍の肩をいそいそ嬉しそうに揉んでる俺がいたりして。(爆)
 …まあ、なんていうか、男のプライドより目先のフルコースが大切なときが、あるんだよな男にはっ。うんっ!
「いいよ、二葉。こんなとこで」
 遠慮(?)しつつも今夜の忍、さりげないスキンシップを嫌がってない様子。…うん、そんなに機嫌は悪くないようだな。(よしっ!)
 忍のかばんを受け取りつつ、俺は更に今後(今夜?)のための「忍・ご機嫌度」のリサーチを続行した。
「アナタ、お風呂にする? ご飯にする?」
 冗談交じりの俺の問いに、
「……気持ち悪いんだけど」
 と、心底嫌そうな顔の忍に流石の俺もちょっと…いやかなりグサッと来たが、いやいや、わかってるさ忍。照れてるだけだろう? わかってる、ああ、わかってるとも忍。おまえが俺を愛して愛して、愛しちゃってるのはな!(ふはははは!/高笑い)
「二葉ーっ、そんなとこでひとりで笑ってないでさー、…頼んでおいたテープってどれー?」
「あ?…ああ!」
 ひとり廊下で忍のかばんを抱きしめて仁王立ちで笑う俺に、すでにリビングに到着済みの忍がテレビの前でごそごそ物色しながら訊いて来た。
 そうそう、忍に頼まれてた番組。もちろん、きっちり撮らせていただきましたとも♪
 今日まで忍は2泊3日の出張に出ていた。
 その間、忍がハマりまくってるテレビドラマの最終回スペシャルがあったのだ。
 毎週欠かさず見続けての最後を飾る最終回。くれぐれも頼むと言い置いて出かけた忍。
 任せろ忍。俺様に不可能はない! 愛の力でバッチリ録画しといてやるぜ!
 と、なには置いても一球入魂で取り組んだ録画。その成果を見せるため、意気揚揚とリビングのテレビの前で待つ忍の元へと向かった。
「ちゃんと撮ってあるからさ、その前になんか軽く摘まもうぜ? なっ?」
 少し思案気な顔で、でもすぐに忍はオッケーしてくれた。(んふふふふ)
「んじゃ、ちょっと待っててな? すぐになんか作っからっ」
「あ…、じゃあ二葉。待ってる間、ちょっとだけ見てちゃ駄目?」
 …全く。そんな可愛く「駄目?」なーんてお願いされたら、イヤとは言えないだろうが、このこのこのっっっっ♪
「んじゃ、できるまでな?」
 確認をとると俺はお待ちかねのビデオテープをセットする。
『ジィー………』(砂の嵐)
「これに丸々入ってるから。巻戻ししてあっから、すぐ入るぜ」
 嬉しそうな忍。得意気な俺。…さあて、そろそろ入るかなっ♪
『ジィー………』(砂の嵐)
 入らねぇ…。
「…遅いね?」
「…あ、ああ」
 お、おかしい。(汗)
『ジィー―………』(砂の嵐)
 ど、どうしたんだっ…!(大汗)
「…二葉?」
「…あ、ああ」
「撮ったあと、見直した?入ってた?」
「…み、見直してない」
「失敗、とか…?」
「とか…?」
 なんてこったオリーブ!
 まさかまさかまさかっ!!
 忍の大好きな番組を、忍が楽しみにしてた番組をっ、忍に「お願い」されておきながら撮り損ねるなんてーーーっっ!!(オーマイガッ!!/泣)
 …いや!俺のことよりもっ…!!
「忍っ…!」
 忍のほうがショックはデカいはずと焦って忍に向き直ると、
「…そんなに気にしないで。ねっ?」
「へ…?」
 逆に心配そうな忍に気遣われてしまった。
 お、俺いまそんなに悲愴な顔してたんだろうか…。(u_u;;)
「いま見れなくても、テレビはまた再放送やビデオやDVDや…見る機会はこれからもあるから」
「でも…おまえあんなに楽しみにして」
「好きだし楽しみでも、それはそれだけのものだよ。そりゃ凄く感動できるドラマだけど、二葉が『俺のために』って思ってくれたことのほうが俺にはずっと大切だよ」
「忍…!!」
 …と、感激のままラブラブアワーに突入かと思われたそのとき、
「お届け物です。(笑)」
 忍のかたわらにあやしく微笑む男がいた。
 その手には、ビデオが1本。
「一樹さん!?」
「そんなことだろうと思ったよ、二葉。…忍、感動の最終回120分スペシャル、しっかり標準で撮っておいたからね。(微笑)」
「一樹さん…。当分見れないと思ったのに…。(感涙)」
「涙ぐむのは早いよ忍。スペシャルだけあって、はじまって3秒で涙が出る演出なんだから。(笑)」
「そ、そうなんですか?」
 涙をこらえながら一樹の言葉にそっと微笑みかける忍。(…かわいい!)
 じゃなくてっっ!!
「どっからわいたっ、一樹っっ!?」
「人をボーフラみたいに…。(苦笑)」
「失礼だよ、二葉っ」
 …だだだだだってよぉぉっっ。(…しゅん)
「二葉が帰ってくる前にね、管理人さんに『身内のものですけど』って言ったらすぐに開けてくれてね」
 …出たな一樹マジック。(←?)
「で、そこのクローゼットの中でしばらく」
「しばらく…?」
「6時間ほど。(笑)」
「わぁ…、さすが一樹さん。辛抱強いですねっ。(感嘆)」
 …辛抱強いとかなんとか、そーゆー問題じゃねーだろ忍。
「で? 忍。どうする、コレ」
「一樹さんはもう見たんですよね?」
「まあね。…でも忍ともう一回見ようかな?」
 嬉しそうに笑顔全開で答える忍に…、俺は? 俺の立場はっっ!?(泣)
 そんな俺の心の声が聞こえたのか、忍が俺のほうを見た。(…よかった!!/心底)
「二葉、先に寝てくれてもいいけど…」
 なにーーーーっっっ!?
「おまえと一樹をふたりにしてかっ!?」
「…じゃあ一緒に見る?」
「当たり前だっ!」
「それじゃあ、俺ちょっと着替えて来るから。…一樹さん、少し待っててもらえますか?」
 一樹が微笑で答えると忍はタッタカ着替えに行った。
 その後姿を見送る俺が少々哀れだったのだろうか。
「忍は、テレビでも本でも音楽でも、大切にきちっと見たり聞きたい物はひとりで楽しむタイプだよね」
「?」
「いまは俺がテープを持ってきたからってこともあるだろうけど、いつもはおまえと一緒に見たりしてるんだろ?」
「…まあ、ふたりで住んでるし。いるときはいつも一緒だけど」
 ていうか、俺が忍にベッタリだからかもしんねーけど。
「集中したいときには、そばに人がいるとイヤみたいなんだよね忍は。でも二葉がいるのは平気なんだよね?」
 クスクス笑いながら一樹が言う。
「忍には、二葉は空気なんだろうねぇ…」
 いっそ思わせぶりな笑い声に、俺はちょっとムカついた。
「それって空気や安全はタダって思ってる日本人的思考って意味か?」
「バカッ!!!」
「…てっ!」
 罵声と同時に突然後ろから忍の鉄拳が飛んできた。
「痛くて当たり前だっ!」
 お、怒ってる。
 ししし、忍が、怒ってる。(大汗)
「なんだか取りこんできたみたいだし。今夜はこれで帰ろうかな。じゃ、またね」
 おいっ、ここまで来て「帰ろーかな」とか「じゃまたね」なら、最初っから来んなよっ!!(涙)
「なんのお構いもしませんで」
 …だからその落ち着いた挨拶が怖いんだよ忍ーっ…。(泣)
「…あ、兄貴。よ、よかったら今夜は泊まって…」
「おやすみ、二葉、忍。(にっこり)」
 バタン。
 …おやすみなさい、一樹にーさん…。(しくしく)
「二葉。」
「………はい」
「誰がタダだって?」
「…いえあのその」
「誰がタダだと思ってるって?」
「……いやだからその」
 過去最高に恐縮しまくる俺に、突然忍は笑い出した。
「…全くもう。二葉は、確かに俺にとって空気で安全だけどね。あ、だけど、タダとかそういうんじゃないよ?」
 奈落に落ちそうだった俺、ちょっぴし上昇してみたり…。
「空気は、ないと生きてけないし。安全は、それだけ二葉が俺の帰る場所だってことじゃないか」
 ………ものは言い様。
「いま、『ものは言いよう』って思っただろ?」
 いえいえ、滅相もございませんっ!!
 俺は力の限り全力で首を振った。…ていうか、なぜわかる忍。(汗)
「まあ、…いまちょっと作ったけどさ。(笑)」
 しのぶぅぅ…。(泣)
「でも、ほんとにそう思ってるからすぐに言葉にできるんだよ? それに、そういうこと言葉にしなきゃわからないなんて、…今度会ったら絶対一樹さんにからかわれるよおまえ」
 最後はわざと呆れたような口調で、でも笑いを隠しきれない様子で忍は立ち尽くす俺の腕を引っ張るとリビングのソファにまで導いた。
 こっこっ…これはっ…!!(もしやっ)
 こっこっ…今夜はここでっっ…!?(…くっ!)←花血噴出5秒前♪
「しっしっ、…忍!!!」

 …結果的に、そんな忍めがけた俺の渾身の特攻は空振りに終わった。
 なぜなら、すでにセット済みの金●ビデオが忍の手にしっかと握られたリモコンによって見事な再生をスタートさせていたからだ。そして――。
「……ぅ…っ…」
 一樹の予言(?)通り、再生3秒で忍は涙をこらえている。(実況)
 ああ、かわいいな………。(感想)
 あと120分も、こんな忍をかぶりつきで見てられるなんて………………、
 どうせなら俺が泣かした忍をかぶりつきで見たかったぜ―――――っっっ!!!(絶叫)
「しぃぃぃっっっ!!!」
 …心で叫んだつもりが声に出してたらしい。(バカだな、俺…)
 とりあえず、俺の絶叫に苛立った忍の小刻みな連打が綺麗にマイボディにヒットした。
 そういうわけで、

    こんやも おあずけな おれでした マル (涙)  〜『二葉の心の日記』より〜

*** おまけ ***

120分後――。
 もしかしたらの期待とともに忍の隣でじっと待ってた俺は、再生が終わっても固まったままの忍に声をかけた。
「…忍、終わったぜ?」
「……よかったねぇぇぇっっ!!(感動の嵐)」
「あ…? …あ、うん」
「二葉もそう思うっ? そうだよねっ! やっぱり金●先生だよねっっ!!」
妙にテンション高い忍に押されつつも、ここは男として(?)抑えとくべきポイントかもと、
「ああもちろんっ! 誰がなんて言ったって、きんぱっつぁんだよなっっ!!」
…と、忍に対して点数稼ぎな発言をしたのがまずかった。
「じゃあ、もう1回見ていい?」
 ………はい?
「二葉がわかってくれて、…俺、嬉しい!」
 の言葉のあとににっこり微笑まれた日にゃ…。(大後悔の嵐)
「朝までだってつきあうぜ!」
 そんな自分の言動に、自ら首を絞めている自業自得な俺だった――。


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