投稿(妄想)小説の部屋

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No.414 (2002/02/08 14:24) 投稿者:真城理

白雪姫13

「鏡よ、鏡〜」
 その日の夕刻、いつものように桔梗妃は大きな鏡に向かっていました。やけにご機嫌な桔梗妃。いつになく出てくるのが遅い鏡の精が20回呼んでも出てこないことなんかちっとも気になりません。
「煩いな、なに浮かれてんだ」
 やっと出てきた悠は、見るからに有頂天な桔梗に不機嫌な表情を隠さず冷たく言い放ちました。
「ふふ〜ん♪ それはね、いつもの質問の答えで分かるわけ」
 つれない悠の態度はいつものこと。気にせず桔梗は続けます。
「鏡よ、鏡〜世界で一番美しいのはだ・あ・れ〜? それはワ…」
「…それはあんたの継娘白雪姫だよ」
『ワ・タ・シ』と続けようとした桔梗妃は醒めた口調で呟く鏡の精の思いがけない一言に、絶叫してしまいました。
「な、なんで〜〜〜!」
「煩い。」
 鏡も割れんばかりの大絶叫に、心底嫌そうな顔をした悠は耳をふさぎました。
「嘘ッ!」
「嘘呼ばわりするんなら見せてやろうか?」
 そう言うと、鏡にはいきなり忍こと白雪姫の、どアップが映りました。
 どうやらこの鏡、見たい人の姿が見える優れもののようです。
「なにこれ、本物?! もしかしてこれで卓也のこと見れる?!」
 ピント外れにもうきうきした声でそんなことを尋ねられ、さすがの悠も顔が引き攣っています。
「…見れる訳ないだろ、一応見たい場所に鏡がないと見れないんだよ、これは。あったところで見せないけどな。それよりも、そんな悠長なこと言っている場合か?」
 その言葉に桔梗は我にかえりました。
「そうだよっ! だってだって俺、今日毒飲ませた筈なのに! なんで生きてるんだよッ!!」
「飲んでなかったからじゃないのか。一体どんな飲ませかたしたんだ」
「え、だから…」
 かくかくじかじか、これまでの件を実演付きで説明して見せた桔梗の姿に、説明を聞き終わった悠はいつになく優しそうな微笑を浮かべました。
「何で失敗したか教えてやろうか」
 尋ねられ、桔梗はこくこくと頷きます。
「それはな…化けた相手の人選ミス」
 優しげな表情を一転させ打って変わって小馬鹿にした顔をした悠は、そう言い放ちました。
「えー! だって鷲尾って奴、この国でトップを張る人気ホストって話だよっ!」
「馬鹿。相手は温室育ちの王女様だぜ。見るからに怪しそうな男からもらったもんなんか口に入れるかよ」
 もっともらしいその言葉に、納得した桔梗です。
「じゃあじゃあ! 怪しくない奴に化けてもう一回トライすればいいんだよね。まかしといて、俺化学だけは及第点をつけてやるって師匠から誉められたんだ♪」
 見ててね卓也っ! がんばるよ〜! と、遠吠えるその後姿に、
「……及第点程度で誉められたと認識するようじゃ、レベルが知れたもんだな」
 と悠は肩をすくめて呆れた眼を向けました。


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