ローパーのイベント特別編とは?(後編 その2)
二葉がローパーに入っていくといつもとの違和感を感じた。
「なんか変じゃねー?」
店の中を見渡してみても変わったものはなにもない。カウンターでは卓也が酒を作っているし一樹は見まわりながら時折客とおしゃべりをしている。今日はエマ&とりまきねぇちゃんsもいるらしく女だけのかたまりもあった。
変といえばエマを中心に服装が派手だ。とくにエマは緋色のチャイナドレスを身に着け美脚を惜しげもなくさらし艶麗な美女として店の華となっている。それに店が混んでない?
とりあえず俺はカウンターまで近寄っていった。
「卓也、暇そうじゃん」
「ああ」
なんだかいつにも増して寡黙であった。
「二葉来てたんだね」
声のほうに視線をむけると一樹が近づいてきた。
「店混んでないじゃん。俺なにすんの?」
「じゃあ・・・」
一樹はちょっと待ってと目で合図するとカウンターにひっそりと座っていた男に話しかけた。
「バーボンのロックなんてめずらしいですね。ブランデーのほうが好きなのに・・・なにかあったんですか?」
「・・・・・・お前のせいだろうが!」
そんなセリフは物ともせずににっこりと微笑み返していた。
30半ばくらいだろうか、仕事は完璧にこなす冷たそうな顔もスタイルも抜群にいい。座っているのでわからないが俺より背が高いたろう。
10年、15年後この男のようになっている自信がない。文句なしのいい男だった。
「さぁ、いらしゃいましたよ」
一樹の視線の先に俺も顔を向けてみた。
肩までのストレートな髪、二重で切れ長な瞳、唇は薔薇色に染まっている。
黒のロングドレスは胸元こそ開いていないがほっそりとした腕が肩から出されていて、歩くたびに脚が見え隠れするタイプのドレスだった。
背も高く美人な彼女によく似合っているのに本人は連れの男を見る目が少しうるんでいる。
「卓也、アルディラをさしあげて」
一樹は男がいることにはかまわず女性の手をとりそっと唇をつけた。
「今度はひとりでいらしてください」
にっこりとされて相手は頬を染めた。
「一樹!!!」
3人のやりとりが続く中ふとカウンターを見ると卓也に酒の注文を伝えている女がいた。
着物に漆のおぼん姿なんて変な奴だなと思っていたのだが気になって見ていると卓也と話しをしているようだ。楽しそうに笑っている顔がはっきりと見えた。俺は一瞬息が止まった(と思う)。