投稿(妄想)小説の部屋

ここは、みなさんからの投稿小説を紹介するページです。
投稿はこちらのページから。 感想は、投稿小説専用の掲示板へお願いします。

No.325 (2001/08/06 00:04) 投稿者:佐保

JUST 1

「池谷・・・先輩?」
 呼ばれて振り返ると、伊田と朝井が並んで立っていた。

 今日は午後から学校で先生達の会議があるとかで、授業は昼間でだった。
 俺は最近生徒会の引き継ぎの為の資料整理で毎日七時頃まで残ってて、二葉とも電話で話をするだけで2週間会えない日が続いてた。土日は二葉もモデルの仕事が入ってたから・・・。
 でもやっぱり声だけじゃ寂しくて、(何ていうか体がすごく人肌恋しくて・・・昔ならこんな事思うのはイヤらしいとか思ってたけど、今は好きな人に触れたいって思うのは自然なことだって分かってる)会いたいよって電話口で言ったら、二葉は嬉しそうな声で「俺も」って言った後、ゴメンって溜息をついた。
「明日は一日中仕事入ってるんだ」
「そっか・・・」
 ホームルームで突然先生から、明日は昼までで学校に居残りするのも禁止だって言われた時、正直俺は喜んだ。資料整理はまだ三分の一くらい残ってたけど、そんな事より何より二葉に会いたかったから。
 本当は明日、二葉に仕事が入ってるの知ってたけどもしかしたら昼に少しくらいなら会えるかなって思ったんだけど・・・。そう考えてた自分が何だか相手の事を考えない自分勝手なヤツに思えて落ち込んでしまった。でもそんな俺の考えを二葉はすぐ分かっちゃうんだ。そういう我が儘は嬉しいって、今夜は興奮して眠れないかもって、明日は撮影なんだから責任とってよって・・・。今までは電話でするのなんか絶対ヤダって言い続けてたけど、何か今日はしてもいいような気分になってた。俺もそれくらい声だけでも二葉に触れられたがってたから。
 俺はドアの方を気にして初めはどうしていいか分からなかったけど、二葉がリードしてくれた。耳元から聞こえてくる声はホントに二葉が側にいるような錯覚を起こさせて、思った以上に俺は感じてしまったんだ。

 終わった後、二葉は明日何時に学校が終わるのか聞いてきた。
 約束はできないけど時間が空いたら会いに行くよって。
 俺はそれだけで、もう明日が待ちきれなくて夜も眠れなかった。

 授業が終わるちょっと前、窓の外からバイクをふかす音が大きく響いて、その後走り去っていく後ろ姿が見えた。ほんの一瞬だったけど、それが誰だかすぐに分かった。
 俺はもうチャイムが鳴り終わるのも待ちきれなくて、あらかじめ鞄に教科書をつめておいて、ホームルームが終わると同時に教室を飛び出してた。
 二葉は学校の近くのハンバーガーショップの前にバイクを停めて、電信柱にもたれながら携帯をいじっていた。すぐに二葉は俺に気づくと携帯をいじるのをやめて俺に向かって歩いてくる。
「今、お前にメール送ろうかと思ってたトコ。もしかしたら気づいてないかと思ってさ。」
 嬉しそうに俺を見つめてくる二葉は、顔は化粧をしたまんまだった。って言っても女みたいなのじゃなくて、ファンデーションと目元に陰影を軽くつけただけのもので違和感はない。ちょっと野性味が消えてて大人っぽい・・・かな。久しぶりに会う二葉に何だか見惚れてしまってドキドキした。
 昔小沼に「自慢したくなんない? あいつは俺に惚れてるんだぞって」って言われた時、まだ俺達は付き合ってなくて、なんないよって否定したけど、今なら、うん、すっごく自慢したい感じだ。
 ゆっくり俺からも二葉に近づくと、そっと二葉は俺の腰に手を回してきた。軽くバイクに寄りかかりながら、抱きしめるでもなく優しく背中をなでてくる。普段なら周りの目を気にする俺もなぜだかすっかり警戒心を解いてしまってて、そっと二葉の右腕にてを添えると二葉も後ろに回していた手を離して今度は俺の左腕をもむようにして触れてくる。もう片方の手で俺の頬に触れようとした時、伊田が声をかけてきたのだった。


このお話の続きを読む | この投稿者の作品をもっと読む | 投稿小説目次TOPに戻る