投稿(妄想)小説の部屋

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No.286 (2001/07/05 07:26) 投稿者:桜草

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 記憶をなくして三ヶ月、忍に笑顔が戻った。
 俺を怖がることもなくなった。
 見た目には以前の二人にちかい…よな。
 だから、時々忘れちまう。忍が記憶をなくしてるってこと…
 こうなると、後は俺の理性との闘いだよな。

「…忍、どしたよ!?」
 いきなり俺の後ろに隠れた忍。
 ふと前を見ると、がたいのいい男が立ってた。
「池谷…先輩。」
「おまえ、伊田だな!?」
「俺のこと知ってるんすか!?」
「忍からの話しでだけだ。」
「へぇー、話しだけで俺のことわかるんすか!?」
 いやな感じのする奴だ。
「なんでここにいるんだ?」

 俺を見るこいつの挑発するような目…
 そして気のせいだろうか、忍を見る目に愛しさがこもってる。
 まさかな…
「ところで、あなた名前は? 池谷先輩とはどういう関係なんですか?」
「なに…」
「小沼先輩の従兄弟ってことは知ってます。」
 俺の袖口を掴む忍の手に力が入る。
 俺は忍の肩を抱き寄せ、安心させるようにポンとたたいてやる。
「あなた、池谷先輩の記憶がないのをいいことに…」
「てめぇ、なんだと!!」
「二葉…やめて」
 それまで俺の影になってた忍が前に出て叫んだ。
「二葉…って…池谷先輩、この人が、二葉…」

 口をあんぐりとあけて伊田が俺と忍を見比べてる。
 この様子だと、二葉と忍の関係は知ってるみたいだな。
 ただ、その二葉が俺で、男だってことに驚いてる…でもって、伊田自身も忍のことが好き、目は口ほどに物を言うってアレだな。
「悪いけど、こいつは昔っから俺のもんなんだぜ。」
「そんなこと…わからないっすよ!」
「なんだと…」
「先輩、きょうは先輩の顔見に来ただけなんで帰ります。これ以上先輩を怖がらせたくないんで…元気そうでよかった」
 伊田は忍だけを見つめ、そう言うと帰って行った。

 忍は優しいし、情に流されやすい。
 一人で全てを抱え込んで、自分で自分を追い詰めてしまうとこもあるから、つい助けたくなるんだよな。
 そんなとこがたまらなく可愛いんだけどよ。
 忍狙いが多いのも確かなんだよな…
 忍は俺の恋人だ!!
 忍が好きなのだって俺だけだ!!
 わかってても不安になっちまうよ。
「忍…早く思い出してくれよ…」
 俺はこの日、我慢できずに忍の額に唇を寄せた。


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