想い(二葉編)
バタンッ!!
たった今、寮の自分の部屋から忍が出て行った。
初めは些細な事だったんだけど、気がつくと大喧嘩になっていた。
俺も忍もどっちも折れなくて、結局忍が出て行った。
久々の一緒にいられる時間。
こんなはずじゃなかった・・・。
「でっ? 俺にどうしろっていうの・・。」
「桔梗・・お前最近俺に冷たくねーか?」
「あのね、本当だったら今ごろ卓也と2人でラブラブのはずなのに変なタイミングで二葉が電話なんかしてくるから、卓也ご飯作りはじめちゃったんだよ!! 朝からあの手この手で誘惑し続けて、やっとのってきたのにぃ〜!!! もう二葉のばかぁっ!! 俺の努力を返せー!!」
「悪かったって・・で、そっちに来てねー?」
「うん。忍は来なかったよ、携帯にかけてみれば?」
「さっきからやってる! 出ね−からお前にかけたんだよ。」
「じゃあ一樹の・・」
「それはない。だって兄貴、今出掛けてっから。」
「えっ、じゃあ」
「何だよ・・・。」
「朝井のとことか・・」
「・・朝井・・分かった。一応かけたいからナンバー教えて」
桔梗から携帯の番号を聞くと二葉は軽いため息をついた。
最近の忍は前にも増して可愛い。
顔はもとい態度やしぐさが無性に可愛くて、俺は会うたびに思わずぎゅっと抱きしめてる。
この前のバスケの試合に忍を連れてったら、バスケ仲間の一人がその後「かわいいいな」って言ってきやがった。
もちろん、そいつは忍が男だと知ってたから「あれで女なら最高なのに。」とかいってたけど、そいつが忍にいつ手を出すか気が気じゃない。だって現に俺は男だけど忍の事愛しちゃってる訳だし。
それだけでもイラつくのに、忍の学校に朝井と伊田って奴がいる。
あきらかに忍狙いみえみえの二人だけど、当の本人は自覚が足りない。
無防備すぎる!! 俺のいない間に忍の身に何かあったら・・なんて考えっともう何か爆発しそう。
最近の俺は何かおかしい。
忍と会えない分色んな事が頭ん中ぐるぐる回っちまって死にそう・・。
早く会いたい・・・。
喧嘩なんてとっととやめて、忍を思いっきし抱きしめたい。
「・・・忍、どこに居んだよ・・。」
二葉のつぶやきは、切なく響いた。