投稿(妄想)小説の部屋

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No.293 (2001/07/06 13:31) 投稿者:深堂律

想い(二葉・忍編)

 忍は伊田と別れた後、二葉の寮へと向かっていたがしばらくして鞄を公園に置き忘れていた事に気づいて慌てて引き返した。一刻も早く二葉に会いたかったのだが、金がなければ電車に乗ることすらできない。
 ようやく公園まで引き返してみると、そこには伊田ともう一人。
 背が高くて、金髪で、耳にたくさんのピアスをしてる男。
 そう俺の恋人、二葉の姿があった。

「なんで・・」
 息を切らせながら驚いてる俺に二人は同時に声をかけた。
「忍・・!!」
「池谷先輩っ!!」
 今まで何か言い争っていたらしく二人はかなり興奮した感じだった。
「どうして二葉がここにいるの・・?」
「お前が携帯でないから探し回ったんだよ。」
「えっうそ・・!?」
 慌てて、ベンチに置いてある鞄の中から携帯を取り出すと着信記録を見た。
 そこには二葉からの着信が確かにあった。
「あれっ、でも一番新しいのだけ通話されてる。」
「先輩すいません・・それ俺が出たんです。」
「で、お前の居場所が分かって来た訳。」
「そっか・・気づかなくてごめんね、二葉。」
「いっけど、取りあえず俺の寮で色々話そうぜ。」
 忍の手を強引に引くと二葉はズカズカと公園の外へ歩き始めた。
「ちょっ・・」
 困った顔で二葉の顔を見ると二葉は急に止まった。
「約束破ったらぶっ殺す・・。」
 低い声で二葉がつぶやいた。これは二葉が本当に怒った時だけだす声。
「俺は逃げませんよっ!!」
 俺が何のことか分からないでいると、伊田が鋭く言い返してきた。俺がいない間にこの二人に何かあったのだろうか・・。ピリピリした空気を流しながら二葉は振り返って伊田をいちべつすると、又俺の手を引いて歩き出した。
 残った伊田は悔しそうに唇を噛んだ。

「二葉、伊田と何話したの?」
 電車の開閉ドアに寄りかかりながら俺は目の前にいる二葉に恐る恐る聞いた。さっきから二葉は一言も自分から話さないし、ずっと険しい顔をしていたので俺は気まずい思いをしながら二葉といた。
「お前こそ何話したんだ?」
「・・・・・」
 俺たちの事相談してたなんて言えなくて、俺は黙るしかなかった。
 そしてそのまま無言で二葉の寮まで俺たちは来てしまった。
 そういえばここから喧嘩が始まったんだよな・・。
「俺らさ何で喧嘩しちまったんだろな。」
 ドアを開けながら突然二葉が話し始めた。
「俺・・あれからよく考えたんだけど、お前とのこと色々不安で八つ当たってた。だから今日は俺が悪りいんだ・・ごめんな。」
「二葉だけが悪いんじゃないよ。俺だって・・」
 悪いと言いたかったけど、涙がボロボロ出て最後の方は言葉にならなかった。二葉の背中しか見えなくて今どんな顔をしてるか分からないのが余計に切なくて又涙に拍車をかけた。
「ばーか、何泣いてんだよ。」
 くるりと二葉は振り返ると、そっと手で涙を拭いた。
 顔は・・顔は、涙のせいでぼやけて見えなかった。
 二葉は泣きやまない俺をぎゅっと抱きしめると頭をなでた。
「俺らさ、色々考え過ぎちまったんだよな。」
「ごめ・・ごめん、二葉ごめんね・・ひくっ・・。」
「泣くなって。」
 俺を優しい声で慰めると二葉は笑った。その顔があんまりにも綺麗で俺は一瞬息をのんだ。
「どうした?」
「何でもない・・。」
 照れ隠しに二葉の胸に頬をよせると、俺からも抱きしめた。
「じゃっ、続きは部屋の中な!!」
「えっ・・。」
 一瞬固まった俺を見て二葉は楽しそうに言った。
「この喧嘩は俺が悪かったけど、伊田の事は別なっ。」
 〜てお仕置きはどーすっかな、何て言いながら二葉は楽しそうに俺を部屋に促した。
(せっかく二葉の事見直してたのに・・・。)
 俺は今から起こる事に恐怖を感じながらも、二葉と一緒にいられる幸せをたっぷり噛みしめるのだった。


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