投稿(妄想)小説の部屋

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No.256 (2001/06/11 19:59) 投稿者:深堂律

想い(忍編)

「何でそーゆう事になるわけ!! 俺の事は考えてくんないの!?」

 数分前、二葉とケンカした。原因は俺にあるみたいなんだけど、何で二葉が怒ってるのかまったく見当がつかなかった。
 知らぬ間に二葉を傷つけてしまったのだろうか?
 こーゆう時、自分の鈍感さがたまらなく嫌になる・・・。
 二葉といる事が居た堪れなくなって、速攻で寮をでたが、家に帰る気が全然しなかったから近くの公園でしばらく時間を潰すことにした。木陰のベンチに腰を下ろすと、気分は最悪なのに疲れきった体が強烈な眠りをさそった。
 何で二葉が怒ってるのか、ここでゆっくり考えようとしてたのに、どこまでもダメな俺・・・。やっぱ最悪・・・。

「くしゅっ!」
 体をブルッと震わせて起きると、俺の体に制服のジャケットが掛けられていた。あれっ、でも俺自分のは着てる。じゃあこれは誰の・・?
「あはははっ。そんな不思議そうに見つめないで下さいよ。俺ですよ、 俺。それは俺のジャケット。」
「いっ・・・伊田・・!! 何でここにいるんだお前?」
「ここの公園、野外コートがあるからよく練習にくるんですよ。そした ら池谷先輩が、ここで気持ち良さそうに寝てるかつい・・・。」
「つい・・・?」
 俺が怪訝そうに繰り返すと、伊田はニコニコ笑った。
「いやぁー先輩・・。寝顔もキュートですねー。」
「な・・・っ。」
 なんでそういう事いうんだお前は・・!! って言ってやりたかったけど、恥ずかしさの余り声がでなかった。
「でもここで寝ると風邪引きますよ。あ〜っ、先輩また何かあった? ま・さ・か恋の悩みだったり〜!!」
 な〜んてね、と伊田が言った頃には、俺の目からは知らぬ間にボロボロと涙が溢れていた。
「せっ先輩・・・。ごめん無神経に言ったりして。俺でよければ話聞くけど?」
 心配そうに伊田が聞いてきた。伊田のやさしさが素直に嬉しかった。
「じゃあ・・・ちょ・・っ・とだけ・・うっ・・聞いて。」
 後輩の前でかっこ悪いと思いながらも、半泣きしながら今日の出来事を話した。もちろん二葉は男だという事をふせて。

「それってさ先輩に焼きもちやいてんじゃない?」
「えっ・・?」
「だってさ恋人は寮暮らしでたまにしか会えないんですよ。池谷先輩みたいなのが恋人だったら不安になるのも無理ないっすよ。まぁ俺だったら寮なんか入らずにずーっと先輩と一緒にいるけどね! 変な虫がつかないように。とにかく、その恋人は今すごく不安なんですよ。」
「そんな事思いもしなかった・・。二葉が不安になるなんて、いつもあんなに堂々としてるのに。」
「先輩、好きな人には誰だって臆病になるもんですよ。先輩だってそうでしょ? いつまでも好きでいてくれる保証なんて、どこにもないんだから。」
 そうだ保証はどこにもない。いつ二葉が俺の事嫌いになるか分からない。もし、二葉に嫌われたらなんて考えたらぞっとする。それが二葉も同じ・・? 俺が二葉を捨てる?
 そんな事ありえない。俺はきっと一生二葉を好きでいると思うから。
 そう思うとどうしてもこの気持ちを二葉に伝えたくなってきた。
 怒った原因はやっぱり分かんないけど、この気持ちを伝えるだけでいい気がしてきた。それでも二葉が許してくれなかったらどんな事でも二葉の為にしよう。俺が出来る事なら全て!!
 そうだ、そうすればよかったんだ。初めから・・!!
「ありがと、伊田! 今ならがんばれそうな気がする・・・。ちょっと行ってくる。」
「二葉ちゃんの所ですか?」
(二葉ちゃんって・・・伊田が実物を見たらびっくりするんだろうな。 何か俺すごい悪人になった気分・・・)
 二葉が女装してる所なんて想像もつかない。
 まぁきっと二葉の事だから、やったら強烈美人系な女になるんだろうけど・・・、やっぱ二葉のガラじゃない。そんなこと言ったら、どっちかというと俺がやらされそうな気がするしね。
「まあね。じゃっ、本当ありがとな!」
「いえいえ先輩こそがんばってください。」
 忍の姿が見えなくなると伊田はでっかいため息をついた。
「何応援してんだろう。俺だって池谷先輩の事・・・」
 何気に視線を落としてるとそこには忍のカバンが置き去りにされていた。
「せっ・・先輩のどじぃ〜!!」
 公園に伊田の叫びが響きわたった。


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