投稿(妄想)小説の部屋

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No.202 (2001/03/04 23:50) 投稿者:なかじ寛之

「炎翠月下」6

 カラン〜カラン・・・・・

「あら、いらっしゃいませ・・・。あなたは・・炎翠月下を育てていただいてる・・・」
「ティアです・・・。すみません、お約束もなしに突然・・・」
「いえ、よろしいのよ。でも、・・何か、訳がありそうね。まさか・・・」
「・・・はい。アーシュ・・あの子、炎翠月下の事でお聞きしたいことがあるんです」
「わかりました。さあ、玄関先で立ち話もね。中へどうぞ」
「ありがとうございます」

 ティアは炎翠月下のアーシュを購入した店のグラインダーズに会いに来たのである。
 もちろん、炎翠月下のアーシュの大切な事について聞く為である。
 グラインダーズに店の中程にある部屋へ案内された。
 ティアが来るとそこには、驚いたことにアーシュがいたのである。
 驚きを隠せない顔つきのティアに微笑みながら、グラインダーズはテーブルにある紅茶を勧めた。

「グラインダーズさん・・・、これは一体どういう事ですか?」

 クスッと微笑してグラインダーズは、傍らにいるもう一人のアーシュ? に声をかけ自分の膝へ座らせ、ティアに話し始めた。

「この子は、炎翠玉王です。よく似てるでしょう。炎翠月下の双子の片割れですわ。もしかして、今日こちらへいらしたのは炎翠月下の寿命についてではないですか?」

 グラインダーズに逆に問いただされて、ティアは青ざめながら頷いた。
 ティアの落ち込みようにグラインダーズは苦笑しながら続きを話だした。

「そう、やはり寿命が近いのね・・・・。この子も先日から元気がなくて、ほら、双子でしょ、何だかわかってしまうようなの・・・。私も参ってますわ」
「そうですか、双子・・・。あの、単刀直入にお聞きします。あの子、炎翠月下のアーシュが助かる方法はないんですか?」
「・・・・どうして、そんな事をお聞きになりたいの?」
「・・・駄目ですか?! ・・私は、出来る事ならこのままあの子とこれからも過ごしたいんです。私は、今まで生きる喜びを半分失っていたんです。でも、あの子が来た日から・・・自分の中に、まだ誰かと一緒に生きて行きたいと、気持ちが強く出始めました。実際、これほど自分が誰かを必要だと思いもよりませんでしたが・・・」
「・・・そう、そこまで、あの子の事を・・・。ありがとうございます。それで、炎翠月下の寿命を延ばす方法でしたわよね、・・・あることはあるんですのよ」
「ほ、本当ですか!! どうやって!!」

 グラインダーズは、落ち着いて と、ティアの肩に手を添えた。

「あの子、炎翠月下の・・・助かる方法は・・・。この子の精気を全て与える事とあなたの愛情を与える事・・・。きっと、助かると大人に進化します」
「この子の・・・精気・・・・、でも、それって」

 グラインダーズは黙って首を横に振り、膝に座ってミルクを飲む炎翠玉王の頭を撫でてやった。

「心配は無用ですわ。きっと、こんな日が来ると予感してましたし・・・。この子も十分に理解してます。この子が炎翠月下の魂に移っても感情は表にはでないですが、記憶として永遠にあるんです」
「グラインダーズさん・・・」

 グラインダーズの膝でにこっと笑いかけ、ティアの指先を握る炎翠玉王ティアは炎翠玉王の小さな優しさにはがゆくなる・・・。

 ブブブブブブ・・・

 胸のポケットに入った携帯がバイブレーション機動した。
 ズキッと胸騒ぎが起きる!
 ティアの顔に反応したグラインダーズはティアに炎翠玉王を託すと早く行ってあげて下さいと微笑みながらティアを促した。

「必ず! あの子を、炎翠月下を助けます!!」
「お願いします」

 バタバタと炎翠玉王を連れて帰った後の店で、グラインダーズは椅子に腰掛け直すと炎翠玉王を想い、涙が溢れた・・・。


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