「炎翠月下」4
「ねぇ、聞いた?! 最近、ティア様が授業を終了で速攻、帰っちゃうって〜」
「ああ! それでしょ! 知ってる知ってる!!何か、夜もお気に入りのバーで、確か・・・(ロー・パー)でも見かけないんだって!」
「何か、考えたくないけど・・・・」
「ああ!! 思っちゃった?! やっぱ、」
「うん、・・きっと、いい人出来ちゃったんだよ〜くやしーーーーーーー!!」
ざわざわと、女達がティアの噂話に華を咲かせてる。
柢王と桂花は自分達でさえ不思議と思っている今のティアを思い浮かべて女達が、哀れだなと苦笑してしまった。
今日も、ティアは授業が終わると同時に自分達への挨拶もそこそこ、自宅へ帰っていった。
柢王と桂花はそんなティアに脱帽しつつ、親友を愛おしく想った。
暫くして、女達がそれぞれの帰宅をして誰もいなくなった講堂で柢王と桂花も帰る話を始めていた。
「さてと、俺達も帰るか?(微笑)」
「そうですね・・・でも、真面目にまっすぐ帰宅はしないんでしょ?」
クスクス微笑み柢王の肩から両腕を絡ませて、桂花は柢王を愛おしく真っ直ぐに見つめた・・・。
柢王はそれに応えるように、優しく桂花の腰から腕を回す・・・。
「何だか、最近誘うのが、俺より上手くなったな(微笑)・・・ちょっと、遠出して海見に行くか?」
「フフフ・・・じゃあ、任せようかな」
「・・・その前に、・・・・に、寄ろうぜ・・・・」
柢王の甘く優しい囁きに応える桂花・・・・。
二人は、秋の木漏れ日に酔いながら教室を後にした。
ガチャガチャとポケットから取り出したキーホルダーから自宅の鍵を取り出して、急いで玄関の扉を開く
「アーシュ! ただいまー、ん? どこかな・・・・?」
ティアは、授業が終わるとそこそこに、自宅へ戻った。
玄関を開けると、何だかいつもはしてなかった帰宅の挨拶がたとえ、人形のアーシュだったとしても、日課になったコトに嬉しさがいっぱいだったのである。
女性の人肌が欲しくなるのは、男として当然だし、やはり人恋しくなるのだった。
でも、何か自分の中で物足りなさがじわじわと浮き出てくる・・・・。
そんな、ティアの心に飛び込んで来たのが、炎翠月下のアーシュだった。
「ん? アーシュ? どこだい?」
出掛ける時、帰宅後 その他の挨拶全て必ず、ほっぺにちゅっ! の日課をするのだったが、ティアが呼んでも一向にアーシュは、出てこない。
心配したティアが部屋をくまなく探すと、ソファーに横になって眠っているアーシュがいた。
ティアは残念! と、思ってしまったが、すやすやと安心して寝ているアーシュを起こすのはしのびなく、じっと静かにアーシュの寝顔を見つめた・・・。
(アーシュ・・・私を気に入ってくれてありがとう・・・私は君にどれだけ救われてるか・・・・。愛してるよ・・・)
アーシュの背中を、子守歌のようにポンポンと撫でるティアはこのまま時間が止まればいいと思った。