to Heart・・・(2)
・・・胸が痛い・・・
締め付けられるみたいに胸が痛む。
どうしたんだろう・・・
急に襲われた胸の痛みに、顔をしかめながら俺は目を覚ました。
まだ眠いと言っている目をゆっくりと開く。
・・・雨音がする・・・
降り出したのか。
ベッドに体を起しても胸の痛みは続いている。
でも、この痛みは俺のじゃない。
・・・忍?
お前なのか?
また、声も出さずに泣いてるんだろう?
一人で泣くくらいなら電話してくればいいのに。
俺は迷わず忍の番号をダイヤルする。
受話器の向こうから聞こえてくるのは、涙を堪えようとするあの無理をしてる声だ。
「大丈夫か?」
『どう…して?』
忍の声は涙で少し掠れてる。何かあったのか?
「なんか、胸ンとこが痛くなって目が覚めて・・・、
そしたらお前が泣いてるような気がしたから・・・。忍?」
ケータイの向こうから嗚咽だけが聞こえてくる。
なんで俺は今お前の側にいないんだろう。
すぐ側にいれば、抱きしめてやれるのに。
『ふ、たば…』
涙混じりの忍の声が、なんだか切ない
超能力があったらいいって今ほんとに思うよ。
そしたらお前のところまで飛んでいけるのに。
忍が俺の名前だけを呼んでる。
「・・・忍、愛してる・・・」
少し落ち着いたらしい忍は、俺の声を聞きたがった。
なんでもいいから話して、と。
俺は、何を話そうか迷ったけど、子どもの頃のやんちゃ振りを披露した。
涙混じりだった声がだんだんと、笑い声を含むようになる。
よかった、笑ってる。
もう大丈夫だって、忍は笑って言った。
ほんとに大丈夫なのか不安だったけど、でもその言葉を俺は信じることにした。
今夜何度めかの愛してるを忍に送って電話を切った。
電話を切ってもしばらくケータイから目が離せなかった。
切ったとたん、泣いてないだろうか。
あいつ、とことんまで我慢するから。
側にいないと、不安になる。こんな夜は特に。
今までもこうやって一人で泣いてたのか?
考えだすと止まらない。よけいなことまで考えてしまう。
明日の朝、忍の家の近くで待っていよう。
今夜抱き締められなかった分、明日いっぱい抱き締めるから。
だから、忍。
もう、泣くなよ。俺のいないところで、一人でなんて頼むから泣かないでくれ。
俺のこの腕も、この胸もお前ためだけにあるのに。