投稿(妄想)小説の部屋

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No.31 (2000/05/23 01:39) 投稿者:おとこ教室組合(ZAKKO)

おとこ教室・番外〜健&江端編〜

 受講生達も皆帰った後の道場に、道着姿の江端は正座していた。
 ふと、人の気配を感じ、顔を上げる。
「……よォ」
 入り口に、くわえ煙草の健が缶コーヒーを片手に立っていた。
「靴」
 短く言われ、そのまま入ろうとしていた健は『チッ』と舌打ちをし、裸足になって道場へと上がりこんだ。
「何しに来た」
 姿勢をくずさずに問いかける江端。
「ん〜ん? 別にィ。お前が妙な事始めたって聞いて、見に来てみただけ」
 板張りの床の上をペタペタと歩きながら、ひんやりとした感触が気持ち良いのか、健は目を細めた。
 そのまま江端の目の前まで来ると、立ったままで言い放つ。
「お前が何バカやろうが気にしねェけど、シンはまきこむなよ…大体、何だってンな事やろうと思いついたよ?」
 江端は表情も変えずに、静かな声で答えた。
「大切な奴を自分の手で守りきれなかった時の痛み…お前も知ってるだろう」
 それを聞いた途端、健のまわりの空気が色を変えた。
 さっきまでは和やかだった目が、まなじりをキュウッ、とつり上げる。
「何が言いてーンだよ、あぁ?」
 しゃがみ込み、真っ向から江端を睨みつける健。
「…ここは禁煙だぞ」
 ボソッ、と返した江端の顔に、健は吸い込んだ煙草の煙を、ふうーっ、と吐きつけた。
 江端が少しだけ、眉をひそめる。
「……その痛みを、他の奴らに味あわせたくねぇんだよ」
 それを聞いた健は、小さく吹きだした。
「なーに、ほざいてやがる…ククッ…お前、いつからそーいうキャラになったワケ? ハハッ、おっかしーな、オイ」
 ケラケラと笑いながら、健は持っていた缶コーヒーを江端に差し出した。
「あンまり笑わしてくれっから、差し入れ」
 黙ってそれを受け取った江端が、プルトップをパキンと開けた、その瞬間。
 健が、指先にはさんでいた煙草を中へと落とし、立ち上がった。
「シンにケガさしたら、それ飲ませっからな」
 ニヤリとした健は、だが、缶に唇をつけようとする江端に目を見開いた。
 するどく舌打ちをし、足の裏で江端の肩を軽く蹴りつける。
「…俺、お前のそーいうトコ嫌ェ」
 それを聞いた江端は、何故だか嬉しそうに口の端で笑っていた……。


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