投稿(妄想)小説の部屋

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No.21 (2000/04/29 22:04) 投稿者:おとこ教室組合(ZAKKO)

おとこ教室・5 〜おとこ格付けチェック・跳び箱編〜

 おとこ格付けチェック四問目終了後。
 一行は、江端の奢りで昼食をとりに出掛けていた…食事先は、近くのホテルのバイキングだ。
 和食のメニューを中心に軽めにとっていた江端と、他のにぎやかな少年達と同じテーブルで食事をするのに気後れしたらしい絹一を除いて、やはり育ちざかりのメンバーは、それなりに腹一杯になるまで食べてしまっていた。
 道場への帰り道、江端は隣を歩く慎吾に話しかけた。
「…今日は珍しくよく食べてたな」
「ええ、やっぱり同じ年頃のヤツらとワイワイ食べるのって楽しいですね」
 嬉しそうに笑いながら話す慎吾に、江端は短く『そうか』とだけ返した。
「……何か俺……鼻からパスタとか出てきそう……」
 お腹の辺りを押さえながら呟く二葉に、忍と桔梗があははっ、と笑う。
「やだな、もう…二葉ってば、笑わせようと思って!」
「二葉、キッタナ〜い」
『いやマジで!』などと言っている二葉の後ろで、アシュレイも胃の辺りを気にしていた。
「どうしたの、アシュレイ?胃が痛い?」
 心配そうに聞いてくる絹一に、アシュレイは首を振った。
「そんなんじゃねーよ。ただ…思ってたよりうまかったんで、つい食べ過ぎちまった」
「そう」
 よかった、と呟き、絹一はアシュレイに微笑みかけた。
 ここしばらく道場で行動を共にしていたせいで、絹一にはこの赤いくせっ毛の少年が、態度はぶっきらぼうながら本当はいい子なんだという事が解っていた。
 アシュレイはといえば、彼の男にしては綺麗すぎる顔と優しい微笑みに『誰かさん』の事を思い出してしまい…ひそかに赤くなったり、していた。
 やがて一行は道場へと到着した…もちろん、お相手の面々は姿を隠している。
 門をくぐり、稽古場に向かおうとする面々を、江端が止める。
「そっちじゃない。今度はこっちだ」
『???』
 顔を見合わせ、後に続く受講生達。
 江端が歩いて行ったのは、庭の方だった…そしてそこには、マットと踏み切り台、通常の物より幾分大きめな跳び箱が用意されていたのであった。
「…江端さん、これ、何ですか…?」
 慎吾が皆の気持ちを代弁する形で質問する隣で、二葉は『跳び箱だ、とか答えたらぶん殴ってやる…』と待ち構えていたのだが、それは無かった。
「ボーナスゲームだ…真の男は、運動能力もなければな。これを一番高い段まで跳べた奴には、一問分免除してやる」
 江端のその台詞に、二葉の眉がピクッ、と動く。
「……おい。お前、最初からそのつもりだったなッ?! っかしーと思ったぜ、お前が俺達にメシ奢るなんてよ!」
「まぁ、な。真の男は、不眠不休でも動ける位でなければな…あまり食い意地がはってるのもよくない、って事だ」
「〜〜〜ッ、お前の笑顔、マジムカつくぜッ!」
 フッ、と笑って答えた江端を、二葉が睨みつける。
「二葉ッ!」
 江端の肩に手をかけた二葉を、忍が必死に止める。
 だがそこに、アシュレイがわって入った。
「なぁなぁっ。それって、こうゆー事か?」
「……何だ?」
 二葉を押し退けて、江端を見上げるアシュレイ。
 何やら、目がキラキラとしている様な…。
「一問も間違えなきゃ、Aランクで『真の男』だろ? って事は、さらにこれで一番とれりゃ、そいつは『男の中の男』なンじゃねーのかっ?!」
「まぁ…そういう事になるか」
 よっし!と小さくガッツポーズをとるアシュレイを、江端は面白そうに見下ろした。
「そうと決まったら、さっさとやろーぜっ!ほらほらっ!!」
 いきなりやる気満々になったアシュレイは、とまどう他のメンバーを庭の端へと追いやった。
 実は、この時彼の頭の中は『俺がそんな評価うけたの聞いたら、ティアの奴…喜ぶかもっ』
 という考えで一杯だった…まぁ、アシュレイ自身『一番』をとる、という事は好きには違いないのだが。
 そして、『ボーナスゲーム』とやらは始まった。
「最初は慎吾か…何段にする」
「えっ、え〜と…6、段位で…」
 それだとて、ウエスト辺りの高さにはなる。
 言ってはみたものの、はたして跳べるのか…と少々不安になりながらも、慎吾は助走を始めた。
『バンッ!』
 踏み切る音と共に慎吾の体が宙をきり、マットの上に着地した。
「………まぁ、よし」
 江端に軽く頭をさげ戻ってくる慎吾を、絹一と忍、桔梗が拍手で迎える。
「慎吾君、すごいね!」
「ねぇねぇ、恐くなかったっ?!」
「…小沼、それじゃ注射の順番待ちの子供だよ…」
 対する慎吾は、サンキュ、などど言いながらも、少々うかない顔つきだ。
 何故ならば…実はおり際にちょっとだけ、尻をこすってしまったのだ…
 横から見ていた江端にしか、判らなかった様だが。
「(…俺、これ以上は無理かも…)」
 慎吾は小さくため息をついた。
「次は絹一だな。何段だ?」
「あ、はい…じゃあ、そのままで…」
 答える声も何やら頼りないが、それも無理はない。
 社会人の彼は跳び箱など、かれこれ10年以上も前に数回、跳んだ事がある位だ。
 案の定絹一は、助走は軽やかだったものの、跳び箱の上に『ぽてん』とまたがってしまった。
「…………」
「…………すみません」
 苦笑いしながら、照れた様に頭をかきかき戻ってくる絹一を見て、忍が小さく微笑む。
「秋谷さんってさ、『ピシッ』としてると、俺達なんかはちょっと近寄りがたいけど…ああいうとこ見ちゃうと、可愛いよね」
『お前はもっともっと可愛いぜ〜』などと思いつつ、二葉はああ、と頷いた。
「次、桔梗!」
 江端の声に、桔梗が『ひっ!』と硬直する。
「お前は何段にする」
「え、あ、う……俺も、そのままでッ……」
「小沼、頑張って!!」
 忍の声援をうけ走りだした桔梗は…だが、踏み切り台の前でピタリ、と足を止めてしまった。
「……?」
 いぶかしんで近寄ってきた江端に、桔梗は涙がうかびかけそうな目を向け、
「…俺やっぱコワいよ〜!うぇっ…」
「…棄権するか?」
 苦笑しながら尋ねた江端に、桔梗はコクコクと頷き、皆の元へと戻った。
『どうしたの、小沼?』と聞いてくる忍に、桔梗はうわ〜んっ、と抱きついた。
「俺やっぱりダメだったよ忍〜!だってアレ、近くで見るとでっかいんだもんっ!!」
 よしよし、と背中を撫でていた忍だが、次の言葉を聞いて脱力する。
「それにっ、跳び箱にぶつかって俺がアザとかつくったら、卓也が悲しむしっ!」
「……小沼、それって、ノロケ……」
「よし、次。忍」
 名前を呼ばれた忍が、桔梗を引きはがして前へ出る。
「俺もそのままでお願いします」
 これもかなり不安な表情をしていた忍だったが…助走に入ると同時に、それが苦しげなものに変わる。
 目一杯食べてすぐに走ったせいで、腹が痛くなったのだ…さらに、その上。
「(わ〜っ、小沼!これ、近くで見るとホントに大きい…ッ!!)」
 通常サイズを上回ったその跳び箱は、目前で見ると確かに威圧感がある。
 なかばヤケクソで踏み切った忍は……
「〜〜〜ッ!」
 ……慎吾の時よりもかなりはっきり、周囲に丸わかりな程に尻をぶつけて着地した。
「……大丈夫か」
 さすがに気遣う様子で声をかける江端に、忍は涙目で『は、はい』と答えると、肩を落とし、戻っていった。
『忍〜〜〜ッ!!』
 すかさず、桔梗と二葉が両側からとりすがる。
「大丈夫?大丈夫?!忍っ!!!」
「お前ッ、そんな大事な所を〜ッ!」(←?)
 涙ぐみながら顔を覗き込んでくる桔梗には笑顔で頷き、ぶつけた所を撫でてくる二葉の手はさり気なくつねり上げながら、忍は大丈夫、と答えた。
「次はアシュレイ、何段だ?」
 おっしゃーッ、と掛け声をかけ立ち上がったアシュレイは(今まで地面に座り込んで見ていた)
 間髪入れずに『10段!!』と答えた。
 それを聞いた一同の間に、おおおッ、とどよめきがおきる。
 新たに積み重ねられいきなり高さを増した10段分の跳び箱を見て、忍は口をパクパクさせながら二葉を見上げた。
「あ、あれって…俺の身長より高い…んじゃ?!」
「…アシュレイの奴…」
 二葉は苦虫を噛み潰した様な表情で、前へ出ていく赤毛の少年の後ろ姿を見送った。
 細身ながら、程よく筋肉がつき引き締まった身体が、スッ、と助走に入り…
見惚れる程鮮やかに台を飛び越え、着地をきめた。
 知らず知らず、皆の口からため息がもれる。
 江端でさえ感心した様に『ほぅ』と、声をもらした…ちなみにこの時、アシュレイは他の皆と違う『力』は、一切使っていなかった。
 ただ、戻りながらアシュレイは、腹が重いのがどうにも不満だった。
 江端の策にまんまとはまり、つい食べ過ぎてしまった自分にも、腹がたつ。
「(…おい、氷暉!お前、ちょっと胃の辺りにこれねーか?)」
「(……何故だ?)」
「(苦しくってさ〜。コレ、消化とかできねーかっ?)」
「(…………俺に残飯処理させるか、お前はッ?!!)」
 彼の中でそんな会話が交わされていたなどとはつゆ知らず、一同は拍手で迎えたアシュレイが『ぐッ…!』と腹を押さえてしゃがみ込んでしまったのを、不思議そうに見下ろした。
 怒った氷暉に一暴れされたせいだったのだが…それまで全く何ともなかったのだから、当然といえば当然の反応だろう。
さて、残るは二葉だが…ここで10段を跳べなければ、彼の勝ちはない。
『ダダずべり』をストップする為にも、何がなんでもクリアしなければならないのだ。
 だが、彼も『鼻からパスタ』な状態だった…先程の台詞は笑わせる為の冗談ではなく、本心からのものだったのだ。
「次は…二葉か。何段だ?」
「10段!」
 どんなに苦しくても、忍と一緒にいる為にはこれを跳ばねばならない。
 頑張れ二葉!男だ二葉!!
 だが、きっぱりと言い切った『男・二葉』に忍が慌てる。
「二葉、あれ、近くで見るとホントに大きいんだよ?! 奥行だってかなり長いし、おまけに俺が跳んだ時より倍近く高くなってるし…!危険だ…っ!!」
「そーそー。も少し低いとこから、ちっとずつ上げてった方がいいって。『いきなり』ってのは、大抵イイ結果うまねーんだぜっ?!まぁ、俺は別だけどなっ」
 もっともな事を言うアシュレイの、最後に(悪気はなく)付け加えられた言葉に、二葉のプライドが刺激される。
 さらに。
「……だ、そうだが?」
 ほんの少し、口の端で笑う江端を見て(彼にそのつもりは無かったにもかかわらず)バカにされたと想った二葉は、カァッ、と頬を赤らめた。
「〜〜〜ッ、10段って言ったら10段だ!俺は10段を跳ぶ!!」
 江端を睨み付けながら、言い放つ二葉。
 その道着の裾を引っ張りながら、忍が小声で囁く。
「駄目だよ二葉!そんなにムキになって…怪我でもしたらどうするんだよッ」
 だが二葉は、そんな忍の手を振り払って叫んだ。
「うるせぇッ、俺はムキになんかなってねぇ! けどな、あいつにあンな風に笑われて、黙って引き下がれるか!! 俺はあいつの笑顔、マジムカつくって言ったろ!!!」
「(…それを『ムキになる』って言うんだよ、二葉…まぁ、お前のそんな負けず嫌いなとこも好きなんだけど…ね)」
 これ以上止めても無駄だと悟った忍は、小さくため息をつき、後ろに下がった。
「よっく見てろよ、江端!!…行くぜッ!!」
『ああっ、講師の江端さんの事、呼び捨てにして〜!』とハラハラする忍をよそに、二葉はビシッ、と江端に人差し指をつきつけ、助走を始めた。

はたして、数秒後。
『ドンガラガッシャーーーンッ!!!』
「ああ、ほら、二葉〜っ! だから言っただろーーっ!!」
 そこには、跳び箱に激突して引っくり返る二葉と、半分ベソをかきながら彼の傍へと駆け寄る忍の姿があったのだった。
 ……結局、このボーナスゲームを制したのはアシュレイであり。
『男・二葉』は、『もしかして…女?』街道を驀進中、なのであった……。


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