投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
冰玉の夢は、早く強く大きくなって大好きなパパとママを翼に乗せて天界を一周することだ。
そのために毎日、栄養価ばっちりのご飯を食べ、翼力トレーニングもしているのだが、水鏡に映してみてもまだK1選手のようにも官庁のようにもなっていない。
(早くママみたいに美人で頭がよくて気が利いてパパみたいに強くてカッコよくて女ったらしの龍鳥にならないかなぁ)
パパとママがお互いを誉めあっている言葉を思い出して願ったりもしている。
そんなある日、冰玉は遊びに出た街である人の噂を耳にした。
クリスマスセールとかいう特別な日に何でも願いを叶えてくれるサンザンクロースルとか言う人だ! いいこでお弔いをしていたら願いをかなえてくれるらしい! 冰玉は早速土を盛り上げお墓を作り、大好きな赤い実を供えてお祈りをした。
(早く大きくなってパパとママを乗せて飛べますように)
(ボクがパパとママの翼になれますように)
大好きなパパとママが喜んでくれる顔を想像して、龍鳥の雛は嬉しげに子の刻参りを続けたのだった。
クリスマスセールの前夜、夢の中で赤いビラビラを着た巻き毛の人が魔法の杖を冰玉に振って、
(おまえがあんまり愉快だから願いを叶えてあげる。このチタンマグネシウムの粉を大さじ3杯、水3カップに砂糖少々、塩適宜、人面草の根と笑い茸を加えてよーくかき混ぜればあらふしぎ。結果は見てのお楽しみだねっ)
目が醒めると体がなんだか重かった。
(もしかしてもしかして)
大きくなったの? 強くなったの?
わくわくしながら水鏡を覗きに行くと、そこに映っているのは青い鱗のような堅い超合金に包まれたカッコイイ龍鳥だ! 冰玉は飛び上がった。翼を動かしてみる。パッサバッサ。森の木がメリメリと倒れる。すごーい。
(パパ、ママ大きくなったよーっ)
叫んでみると堅い嘴から出る超音波で木がどかんと割れる。すっごーいっ。小躍りすると森全体がメキメキどかんっと祝福してくれる。
森林破壊など物ともしないムテキの龍鳥は喜び勇んで家路を急ぐ。
(パパ、ママ、起きてーっ。早く天界を見て廻ろうよーっ)
「こいつ、器用だよな、寝ながら踊ってんぞ」
止まり木の側にいた柢王が心から感心したように呟いた。台所にいた桂花も覗きに来て驚いた顔になる。
眠りながら、その青い翼を羽ばたかせて嬉しそうに囀っている小さな龍鳥。
クリスマスプレゼントの革紐が首に巻かれいるのも知らないのだろう。成長に合わせて調整できるそのバンドには赤い実を思わせる小さな石がいくつも嵌め込まれている。
「なんかすっげーかわいーよなぁ」
柢王が、桂花の肩に顎を乗せて囁く。桂花も頷いて、
「よっぽど嬉しい夢なんでしょうね」
寄り添いながら微笑んで、眠る雛の様子を見守った。
相も変わらず、子の心などかけらも知らない親ではあるが・・・・・・
目の前の、青い小鳥はふたりの宝物だ──
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