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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.317 (2012/04/10 12:56) title:Boy's lobe
Name:まりゅ (sndr3.bisnormaljl.securewg.jp)

Boy's lobe

 暖かいそよ風が、軟らかい草に覆われた地面に寝転ぶ、燃えるような赤毛の少年の上を優しく通り過ぎていく。
 こどもから少年には羽化済みだが、大人にはなっていないしなやかな肢体。
無防備に放り投げられた褐色の手足に余分な肉はないが、思わず突いてみたくなる様な弾力のありそうなぷくぷくした肌。
 そんな少年――アシュレイの隣で、光り輝くような美貌の少年――ティアが厚い本を広げている。
 だが、先ほどから1頁も進んではいない。なぜなら、そのトルマリンの瞳は文字ではなく、アシュレイの寝顔ばかりをちらちらと盗み見ているからだ。
 やがてかすかな寝息が聞こえてくると、ティアは静かに本を置き、膝でアシュレイの元までにじり寄った。
「アシュレイ?」
 小声でそっと呼びかけてみる。寝息のリズムは変わらず、いらえはない。
 神々しいまでに美しい少年は、しばらく、あどけない寝顔をうっとりと眺めていたが、やがて引き寄せられるように顔を近づける。
 ここは守護主天の結界に囲まれている空間。彼の邪魔するものは何もない。時々柔らかな風がふうわりと髪を揺らすだけ。
 たっぷりと苺味(ティア基準)の柔らかな唇を堪能すると、そのまま頬を温かな胸に摺り寄せる。
 ――意識のある時にできたらいいのに……。
 でも、そんなことをしたら、きっと100mくらい飛び退り、理解の範疇を超えた行為に怯えて、離れた柱の影から自分を窺うくらいで側に寄ってくれなくなってしまうに違いない。それより、今は寝てるときだけで我慢してた方がいい。
 とくん、とくん……規則正しい鼓動が頬を打つ。
 アシュレイは元々体温が高い。が、それとは別に、幼い頃人の温もりというものをアシュレイで知ったようなものだ。
『母に抱かれる』ってこういうものなのかな……。
 穏やかな空気に包まれティアの目は自然に閉じて行った。

 はっと気づくと、いつの間にかティアは寝込んでいた。
「よう」
 アシュレイの顔がすぐ側にあり、ドキリとする。慌てて体を起こすが、隣に座ってたはずの自分がアシュレイの胸で寝込んでいたことを、彼はどう思っているのか。
「ご、ごめんね、重かったでしょ」
「いいって。また、徹夜したんだろ? 守天サマが地べたで寝るなんてありえねえもんな」
 とりあえず、地面に直接寝られない軟弱守天が親友を枕代わりにしたと思われても、疚しい想いがばれるよりはナンボかマシだった。
「でも、肉が薄くてあんまりクッションにはならないか。あーあ、早く筋肉ムキムキになりてえなあ」
 アシュレイが腕を曲げて一生懸命力瘤を盛り上げようと努力しているのを見て、
「……ならなくて、いいんじゃないかな?」
 と、ティアが遠慮がちに意見する。
「なんでだ? おまえだって安心だろ? そういうのが護衛に付いてるほうがさ」
「ううん! 君は今だって十分強いじゃないか! それに、私の体型もこのままだろうし、あんまり立派な体格が傍らにいると、よけい弱弱しく見えて威厳がなくなりそうだし。ね? 無理に鍛えなくて良いから!」
 父親である炎王みたいにごつく成長されるのは、今は余り想像したくなかった。こんなに可愛いのにっ……!
「そっか。おまえがそれでいいなら、俺もいい」
 にっこりと微笑むアシュレイに、ティアもうっとりと微笑み返す。
「あ、授業! 私はどれだけ寝込んでたんだろう」
 ティアが急に思い出して焦り始める。
「あー、もう午後一はそろそろ終わるな。次の授業は体術だから、俺行ってくる。おまえはもう少し休んでるか?」
「いや、私も奏器の指導を頼まれてるから行くよ」
 アシュレイが一瞬眉を顰める。アシュレイはティアが下級生たちに体を密着させて指導しているのが気に入らないのだ。
(言わなきゃ良かった)という顔をしていたが、溜息をつき諦めて立ち上がる。ティアも一緒に立ち上がった。
 同じ目の高さになった時、アシュレイがじっと自分の顔を見つめているのにティアは気づいた。
「ん? 何?」
「おまえって……、睫毛長いのな」
 すぐ近くでティアの寝顔をずっと見て気づいたのだろう、アシュレイがポロリと口にする。
「え?」
「何でもねえっ!!」
 慌ててアシュレイが顔を逸らすが、朱に染まった耳朶がティアの目に入る。
(少しは、親友以上の感情も持ってくれてるのかな)
 嬉しくなって、彼の首に抱きついた。
「うわ! な、なんだ?!」
「私達は親友だよね?」
「お、おうっ」
「だから肩を組んだりするよね?」
「お、おう?」
 肩を組むというより抱きつかれてると思うのだが、自分より百倍は頭の良いティアが言うのだから最近ではそう言うのかもしれない、とアシュレイは自分を納得させる。
「飛ぶぞ」
 アシュレイは、それ以上考えなくていいように、ティアをぶら下げたまま地を蹴った。
 ティアは、少し体をずらすフリをして、更に紅くなった耳朶に唇を押し付けた。
 赤ん坊の頃から他人が一緒にいると眠れないアシュレイが、自分と一緒の時はスウスウ寝てしまうのも、ナニをしても目を覚まさないのも、こうやって抱きついても不審に思われないのも、彼の信頼を得られるようずっと自分に課してきた努力の賜物。親友以上になれるよう、少しずつ指導教育していくのがこれからの課題。
 紅くなった耳朶に、それはそんなに難しいことではないかもと、仄かな期待を抱くティアであった。

(おわり)

翻訳ソフトによると
BOY'S LOBE→少年耳朶
少年の耳朶→A BOY'S EARLOBE まいっか...
(loveじゃないのよ〜)


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