投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
前回までのあらすじ
親友のティアの手により、コールドスリープから十年ぶりに目覚めたアシュレイ。
だがアシュレイは、十年後の彼を、どうしても本人と認められないのだった。
...って、2行で終わる内容です...。前編すっ飛ばしてOKです...。
「私たちの国では、コールドスリープは認められていないのよ。重犯罪になるの。いいえ、我が国だけでなく、今では世界的にも認められてないの。十年前、あなたの葬儀を執り行ったわ。あの時、ティアランディア殿に全てをお任せした。彼なら、きっとあなたを幸せにしてくれるわ。こうして、元気な顔が見れたのも、彼が大事にしてくれてるからと良く判る。もう、ティアランディア殿に護っていただくしかないの。解ってね?父上は立場上、来れないけど、いつかあなたに会える日を心から待っているわ。アシュレイ、愛してる。これは父上の分」
そう言うと、姉上はもう一度唇を俺に押し付けた。
俺は、どんな顔をしてたんだろう。姉上は心配そうに帰っていった。
「は、はは…。俺は、もう家族にも国にも不要になってたんだな、十年も前に!葬式もしたって?俺は、アシュレイ・ロー・ラ・ダイは、今や存在もしてないってか?じゃあ、ここにいる俺はなんなんだよ!何で、何で俺をそのまま死なせなかったんだよ!」
喚く俺の肩を、やつは優しく抱きしめる。
「十年前の私は、君を誰にも取られたくない独占したいというだけの、ただの我が儘な子供だった。でも今は違う!今なら、君を護る術を身につけたし、それだけの自信もある。君を護れるのは私だけだ。私に君を護らせてくれ」
「おまえに護られるだけの人生に、なんの意味があるんだよ!」
俺はティアを護りたかった。それが俺の存在する意味だと思ってた。
「てめえなんか嫌いだ!触るな変態!俺の親友を返せよ!俺の大好きだったティアを…」
情けなくて、ヤツの腕を乱暴に払う。
ティアはいつでも俺の一番欲しい言葉をくれた。口下手で、いっつもどうやって説明していいか解らなくて、とりあえず思うままに動いては、周りに怒られてた俺の考えを、ちゃんと理解してくれてた。
ティアに会いたい。俺は、慰めて欲しいのか?なんでこんなに情けないヤツになっちまったんだろう。
いつも大人っぽいティアに、いつかは肩を並べて対等になりたいと思ってた。俺を必要として欲しかった。でも、それはもう、一生できなくなっちまった。どんなに追いかけても追いつかない、それどころか、護られなきゃ生きていけないだなんて、俺の存在価値なんかないじゃないか。
「お願い。今だけ、十年前の私だと思って聞いて」
くちなしの香りがベッドに伏せた俺の体にそっと被さる。
「子供の頃、私は命を狙われてて、何度も君に助けてもらったよね」
そう、解んねーけど、なんでか、俺はティアが狙われてるのに気付いて、あいつを突き飛ばしたり、相手を倒して危機を免れてた。ティアは獣の勘だって言うけど。
「でも、体や命だけじゃなくて、君は私の心を救ってくれた。誰も信じられなくて、早く殺されてしまえば楽になると思ってた私に、君だけがいつでも真実をくれた。君の高潔で真直ぐな心に魅かれていった。君がいるから、君を本気で好きになったから、私も生きていたいと思った」
あの日、ティアが女子に優しくしてるのに嫉妬して、あいつに冷たくあたった。その後にあの告白。きっとあれも、確かなものが欲しいという俺が望んでた言葉だったんだと、今ではわかる。俺だって、おまえが...。
「君が眠っている間、私は笑えなくなっていた。君が必要なんだ。君がいなければ、私も生きていけない」
こんな俺を必要としている?本当に?
「---今日は私の誕生日って覚えてる?お願い。私に君の一年をプレゼントしてくれない?私の為に生きて欲しい。本当に意味の無い人生なのか、一年後に考えてもらえないか?何でも君の好きにしていい、君が嫌がることは絶対にしないから。愛しているんだ…」
涙が零れる。
凍りついた心が少しずつ溶かされる。俺の大好きだったティアの優しさで。
こいつは、この十年間、どんな想いで過ごしてきたのだろう。
十年前の親友と、今ここにいる男が一つに重なっていく。
「お願い」
ティアの泣きそうな声に、俺は小さく「うん」と答えた。
あれから一年。
俺はこの時代にもやっと慣れたし、やりたいことも、やるべきことも解ってきた。
護られるばかりじゃなくて、あいつの役に立てるように、俺が俺でいられるように、きちんと治してくれたティアに感謝している。
あいつは約束通り、相変わらずの態度の俺に、無理強いはしなかった。切なそうな瞳にほだされそうにはなったが。
「ティア…。今日、誕生日だな…」
ティアの顔が真剣になる。この一年の俺を見ていても、まだ心配なんだろうか。俺はすまない気持ちで一杯になる。
「俺…、今は生きてて良かったと思ってる。おまえと一緒にいられて幸せだと思うし、感謝もしてる」
ティアがゆっくり微笑む。
「だから、感謝の気持ちをこめて誕生日プレゼント渡したい…。その…今の俺が唯一持ってるものを…。……俺…自身を…」←古典
「え?」
思い切り勇気を振り絞ったけど、最後は消え入りそうな声になってしまい、聞こえなかったかもしれない。だけどこんなこと二度は言えねえ!
「アシュレイ…本当に良いの?」
う…、聞こえてた…。俺は、自分でも耳まで真っ赤になってるのが判り、死ぬ程恥ずかしかったが、首を縦に振ってやった。
「ありがとう…。こんな嬉しい誕生日プレゼントはないよ…」
くちなしの香りに包まれると、気負ってた体からちょっとだけ力が抜けていった。
時間だけ十年スキップしたけど(スキップがぶっ飛ばすって意味なことも覚えた)、やっぱり俺は未だ15歳のガキだと思うし、一年ずつ年をとって成長していきたいと思う。ティアなら俺の戸籍を何とか復活させることも可能らしいけど、俺は15歳の別人の戸籍を新しく作ってもらった。ティアと10歳違いの。
今は、未だあいつのずっと後ろにいるけど、十年後には手を伸ばせば肩に届くくらいの距離まで近づきたい。そしていつかは、ちゃんと肩を並べられるまでになってやる。十年の年の差なんて関係ない。いつかは無くしてみせる。
それまで、ずっとティアと一緒にいたい。-----結婚は兎も角。(だから俺は未だ15歳のガキで、そんなとこまでは考えられねえよ!)
ちなみに、翌朝しつこいティアには「誕生日は終わった!」って、掌底を食らわせてやった。「そ、そんな…」って言いながら床にのめりこんでたけど、知るか!ああああんなこと、もう、しねえ!------俺がもう少し大人になるまでは…。
★一応、年の差ですが、別世界の無理矢理設定です。年の差は難しいっす〜。次回(何時?!)のお題が、邪・サ○エさん 再 だったりすると嬉しい…
「アシュレイ。君を愛してる。結婚して欲しい」
親友だと思っていた奴-ティアランディア-にそう告白された時、心臓がひっくり返るかと思うくらい驚いた。
結婚?!俺たち未だ14歳だぞ!つか、てめぇは未だ13歳じゃねえか。いや、それ以前に男同士だぞ?!!
そう答えようとしたら、胸に締め付けられるような痛みが走り、意識が遠くなる。
バカ野郎、心臓がひっくり返るどころか、止まりそうだ。おまえが変な事言うから…。
くちなしの香りがする。
あいつが好きでいつも身にまとってた香り…。
「...レイ、アシュレイ?」
誰かが俺を呼んでいる。
あの、バカな告白をしてきた親友ティアの呼び方に似てる。でも、あいつはこんな低い声じゃないし…。
「アシュレイ、判るか?」
ゆっくりと目を開けると、心配そうな綺麗な顔をした男が見えた。ティアに良く似ていたけど、うんと年上の大人の男だ。ティアに兄貴がいたっけ?
「…どこ…?」
男は、ほっとした顔をすると、ここは病院だと教えてくれた。ちくしょう、やっぱり心臓が止まったんじゃねえのか?今度ティアに会ったら、絶対にぶん殴ってやる。
「痛いところは無い?あ、未だ起きちゃダメ。眠かったら寝ても良いからね」
起きようとした俺をそっと押し戻し、冷たくて優しい手で俺の前髪をかきあげる。なんだか気持ちイイ…。
「俺、どうなったんだ?」
「…心臓の手術をしたんだよ。意識もしっかりしてるようだし、後はゆっくり休んで体力をつければ元通りになるよ」
「手術?!」
そんなことになってたとは!あいつ…一発じゃ足りねえ、百殴りだ!
「おまえ、医者か?」
男は一瞬、なんでか寂しそうな顔をする。
「ん、君を手術したのはこの私だ。さあ、もう疲れたろう?しばらくお休み」
男はもう一度髪をなでてくれた。こいつの纏う空気はティアによく似てて、ティア以外の他人がいると眠れない俺だが、気持ちよくなってそのまま眠ってしまった。
その後、俺は驚愕の事実を知らされる。
俺が倒れてから、十年が過ぎてるって言うんだ。
言ってることが難しくてよく判らなかったけど、俺がぶっ倒れたのは、今の技術じゃ治せないような病気のせいで、ティアは俺を氷付け?にして時間をかせぎ、医者になって俺の病気を治す研究に十年かけた、ってことらしい。
昔、スキップすると年に関係なく外国の大学へ行けるとかで(スキップなんてガキの頃以来やってねえけど、なんで大学に行けるのか全くわかんねえ)ティアは外国へ行けって言われてたけど、俺と一緒にいたいからイヤだと断ってた(俺達、親友だからな!)。結局、今回スキップしたってことらしい。あいつスキップなんてヘタクソだったのにな。
で、俺の手術をしたって医者がティアの十年後だって言うんだけど、俺には赤の他人のオッサンにしか見えねえ。そう言ってやったら、ティア(の十年後)のヤツ、すっげ落ち込んでたけどさ…。ちょっと可哀そうになったから百殴りは許してやった。
十年後だなんて、ショックだったけど、病室から出てない身としては、十年後の世界が想像できない。ほんとにあの男がティアの十年後だとしたら、それだけが実感だ。…もう、あいつがティアだって、本当は判っていて認めたくないだけなのかもしれないけどさ。
同じくらいの身長だったのに、頭一つ分も差がついてるのも気に入らないし、同い年の親友には、俺が護ってるという誇りとプライドがあったのに、こいつには俺のおかれた状況の不安も有って、つい甘えてしまう。だから、ティアと認めたくないのかもしれない。甘えたいだなんて…、今だけだからな!
それにしても、こいつは「診察」って言いながら、やらしいことをしようとするので、油断がならない。
「私は医者だよ?なんでそんなに肌を見せることを恥ずかしがるかな。大体、ずっと一緒に寮のお風呂にはいってたじゃない。それに、私は君の知らない、君の体のことも知ってるんだよ」
俺の知らない、ってどこだよ!…(汗
「ああ、あんな綺麗な心臓は初めて見たよ。ほうっ…」
そんなものを思い出してうっとりするなー!こいつ絶対変態だ!
俺はひたすら、魔の手?を排除してるが、都度「可愛い」と言われるのはどうしてだ?!
「てめえがティアだっていうなら、てめえの方が可愛かったじゃねえか。心細いだの、雷が怖いのと、しょっちゅう怯えて俺のベッドに潜り込んで来て…」
ティアはクスクス笑いながら、
「もう!本当に君は可愛すぎるよ…食べちゃいたい…。君が病人じゃなければね」
と、蕩ける様な目で見つめてくる。意味わかんねえ!
しがみついてくるティアに、「俺が護ってやる」と、いつも安心させてたのは、この俺のはずなのに。
「ねえ、私のプロポーズの答え聞かせて」
げ、それって未だ有効だったのか?十年も経ってるんだろ?俺にとってはついこないだのことだけど…。
「だから…。俺は未だ14歳で…」
「君は、もう24歳なんだよ」
そうだった…。信じられないけど….。
「俺たち、男同士だし」
「ちゃんと籍の入れられる国があるよ」
なんだそれ!知らねえよ!!
「大体、おまえ昔から女にもてもてじゃん。おまえの女、たくさんいるんだろ!なんで俺に構うんだよ」
「正直に言うよ。確かに、もう君を治すことなんかできないんじゃないかと、自暴自棄になって、女性に逃げたときも有った。でも、君を失うことなんが考えられなかった。今は一切女性とは付き合ってない。君だけだよ。君だけを愛してる」
「や、やめろ!真剣な顔で言うな!今の俺には無理だ…。そーゆーこと考えられねえ!」
「今の?じゃあ、考えられるまで待つよ」
「待つなよ、待ってたって俺...」
「もう、十年待ったよ。いくらでも待てる。君のことなら。…ただ…。私ってそんなにオッサン?」
そりゃ、俺の親友に比べたら…。ティアも大人っぽかったけど、もっと大人の男っていうか、包容力があるというか。相変わらず細っこいのに、あの頃俺にしがみついてきた腕より全然力強くて、こいつの側にいる安心感も、あの頃ティアがくれたそれとは違って…。
「待つけど、それだけもっとオッサンになってしまうよ…」
「オ、オッサンはきらいじゃねえ!」
あいつが悲しそうな顔をするから、つい、フォローしようとして、訳わかんねえことを言ってしまったら、又クスクス笑われてしまった…。
「コールドスリープは脳細胞に影響がある可能性があるから、今日は簡単なテストをするよ?」
「テスト?!」
「…そんな難しいものじゃないから、構えないで」
うー。テストなんて俺の一番嫌いな言葉だが、これ以上バカになってたら困るので、一応テスト用紙を眺めてみる。
「7×7はしじゅう…????どうしよう!俺、マジでバカになってる!!」
「…君、昔から7の段が苦手だったよね…。解らないのはとばして良いから続けて。落ち着いて考えれば解るからゆっくりね」
俺の苦手なこと知ってるなんて、やっぱりティアの十年後なんだろうな。俺は教師の言ってることが理解できなくて、いっつもティアが後で解り易く教えてくれてた。だから、俺が苦手としてることとか、あいつには全部判ってる。
それにしても元気がないのは、俺がティアだと認めてやらないからか?
テストは、落ち着いてみれば、この俺でもなんてことはなかった。流石に九九も思い出したし。
「俺の脳ミソ、大丈夫だったんだろ?いつ退院できるんだ?」
「…君の姉上-グラインダーズ殿がこちらに向かっている。姉上とお話してからね?グラインダーズ殿は、遅くなったことを詫びてらしたけど、お忙しい方だからね」
わかってる。3歳の時に寮へ入れられてから(ティアとの付き合いはそれからだ)、親父とは何度も会ってないし、姉上は親父の補佐として働き始めてたから、最近(って十年前か?)は姉上にも殆ど会ってなかった。
親父は俺を跡継ぎにしたがってたけど、俺は姉上のほうが相応しいと思ってる。血筋的にも、人間的にも。
姉上は相変わらず綺麗だったけど、赤ん坊を連れていた。俺のガキの頃にそっくりな、赤い髪の坊主。
「ああ、アシュレイ!よかった、顔を良く見せてちょうだい」
姉上は俺に抱きつき、顔に何度も唇を押し付ける。ティアの視線がイタイ。
「ティアランディア殿、この子は息子のアーシェと言います」
「初めまして、アーシェ殿」
姉上は、赤ん坊をティアに紹介し、ティアの奴は、赤ん坊に「ちあー」とか言われて相好崩してやがる。なんか面白くねえ。
「アシュレイ、あなたの甥よ。父上の跡はこの子が継ぐわ」
え?親父は俺を諦めてくれたってことか?
姉上がティアに目で何かを確認し、奴は頭を振って応える
「アシュレイ、落ち着いて聞いてね」
次回予告
この後、アシュレイの人生を一転させる事実が発覚する!
二人の運命やいかに?!
(すません、5000字に納まらなかっただけです...)
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