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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.279 (2011/01/13 12:56) title:望み叶う日
Name:まりゅ (jalpx.mobile-p.jp)

★年の差…ではないです。下記はそれぞれ繋がりもないです…

<ティア6歳くらい>

ある日のこと。
グラインダーズが、弟の額に唇で挨拶をしているのを、ティアは羨ましそうにじっと見ていた。

「ねえ、姉上にそうされるのってどんな感じなの?」
ティアはグラインダーズが去るとすぐアシュレイに尋ねる。
「別に…。ちょっとくすぐったいかな」
期待に満ちた目で、じーっとアシュレイを見つめるティア。
「なんだ?どうかしたのか?」と、アシュレイはなんでそんな目をするのか全く解らず尋ねる。
「どういう感じなのか私も知りたい。ねえ?」
と、おでこを突き出され、やっとティアが何を望んでいるのかに気付く。
勉強家のティアは、自分が知らないことがあるのが気に入らないのだろう。
だけど、だけど、オデコとはいえ、そんなこと簡単にできるかと、アシュレイは焦って「父上にやってもらえ!」と怒鳴った。
何故、姉ならいいのに、親友だと恥ずかしいんだろう?
「君、閻魔大王にされたいの?」と返され、あの巨体のでかい顔が近づくことを想像したアシュレイは、ぞっとして思いっきり頭をふるふるする。
自分だって、もっとガキの頃、父親がじゃれて顔や体にチュッチュしてきたのは、決して嬉しくなかったのだし。
「大体、父上とは滅多に会えないよ」
そうだった。ティアは親と別れて暮らしているから、ティアの家族の代わりになろうとアシュレイは思っていたのだった。でも、それとこれとは…。
「えっと…、そう、普通、男同士はしないんだ!」
当然、父親も男だという矛盾に気付いていない。
クラスのとりまきにやってもらえば、ということも思いつかない。
「だって…私には母上も姉上もいないし…」
ティアが望めば、天主塔中の使い女が列をなしていくらでもしてくれることなぞ、アシュレイは知らない。尤もそんなことをティアは望んでいないのだが。
ティアは寂しそうに俯きつつ、ちらりとアシュレイの様子を窺う。
優しい彼には無視できないセリフのはず。かなり心が動いてる気配。後一押しで落ちるであろうことは明白。
「グラインダーズ殿にお願いしてみようかな…。私も姉上のようにお慕いしてるし…」
アシュレイの顔が驚愕の表情に変わり、阻止しようと焦る。
「お、俺がしてやる!」
たとえ親友とはいえ、大切な姉上にさせたくないのか、大切な姉上とはいえ、親友にふれさせたくないのか解らないが、とにかくその状況だけは回避しなければと、恥じらいよりその思いが勝った。
ティアといえば、心の中でガッツポーズ。

「目をつぶれ!」
「どうして?」
「そういうもんなんだ!」
「ふーん?」
恥ずかしくて、ティアに見られたくなくて、無理矢理目をつぶらせると、アシュレイは勇気を出して、爪先立ちになり、そっと御印に唇をぶつけた。

「…フワフワして、ドキドキして、とってもあったかい…」
ティアは目をつぶったままうっとりと呟く。
アシュレイも同じ気持ちだった。姉にするときにはこんな気持ちにならないのに…。
ティアだからかな。ティアに触れると、いつも同じ気持ちになるような気がする。
「アシュレイありがとう。アシュレイの家族になれたみたいで嬉しいよ」
ゆっくり目を開け、ティアはアシュレイに抱きついた。
くちなしの香りに包まれて、アシュレイはもっとフワフワした気持ちになってくる。
家族にはなれないけれど、ティアとは家族みたいに一生一緒にいられるといいな、とアシュレイは思った。
そしてティアは、アシュレイにとって家族以上の存在になってみせると、決意を新たにするのであった。

<ティア 13歳くらい?>

柢王が美味しいお酒を手に入れたからと、今日はティアの私室でアシュレイと3人で飲み会。
前回の飲み会では、ティアは最初に酔いつぶれてしまい、アシュレイの膝枕で寝てしまうという失敗を犯してしまった。
失敗1:酔っ払ったアシュレイ達の会話を聞いてない(普段でないような話が出たはず!) 失敗2:意識がなかったので膝枕の感触を覚えてない(今度は酔っ払ったフリで…)
今回ティアは、同じ轍を踏まぬよう、自分のグラスは殆ど聖水じゃないかというくらい薄め、アシュレイのグラスには殆ど生(き)じゃないかというくらい濃くしている。
柢王と同じペースで飲んでいたアシュレイは、果たせるかな、かなり酔っ払っていた。
話題は、初恋になっており、面白おかしく、ちょっぴり切なく、柢王が自分の初恋話を終えた。(ティアはフィクションだとふんでいる)
「で、アシュレイの初恋は?まあ、まだ若いんだし、未経験でも恥ずかしくないけどな」と柢王がふると、ティアも「そうだよ、私にだって、未だそんな『女性』はいないもの」と、アシュレイが見栄を張ったり、「くだらねー」とか言って逃げないように予防線を張る。
恋愛には奥手のアシュレイに初恋なんかありえないけど、いずれその相手に自分がなれるよう鋭意努力中のティアは、ちゃんと未だだという確認をしたかった。
が、
「俺だって、初恋くらいしてらあ〜」
と、酔っ払ってちょっとハイ気味なアシュレイの返事に、ティアのこめかみにぴきっと筋が走る。
3歳からずっと見てるのに。そんな子はいなかったはずだ。となると3歳以前?!
実は姉上とか言うオチ?
「へへ、文殊塾の入学式の日に会ったすっげー可愛いコ」
潤んだ瞳で話すアシュレイに、ティアの顔色がさっと変わる。
(入学式には私もいた!そんな可愛い子いたか?)
(しまった、アシュレイの女の子の趣味は把握してなかった。興味なさそうだったのに!)
一瞬の間に、同窓生女子全ての10年前の顔を思い出し、あれかこれかと推察する。
(上級生とか?年上好みは女性もか?シスコンだし…)
(まさか、男?!)
(でも、アシュレイは男は強くあるべきとの考えなのに、可愛い男が好きとも思えないし…)
一応、ティアは同窓男子の当時の顔も思い浮かべてみるが、思い当たらない。
柢王は、焦りまくるティアを眺めて、ニヤニヤしている。
「その後すぐに『私は男だ』って言われて、初失恋も一緒だったけどさ〜、あははー。ぐー」
アシュレイは言うだけ言うと、そのままひっくり返って大の字に寝てしまった。
一瞬、びっくりした顔のあと、ティアは破顔一笑。
「柢王、聞いた?私のことだよ!アシュレイが名簿持ってティアランディアってどいつだーって言って…」
アシュレイに寄り添うと、彼の頭を膝の上に乗せ、嬉しそうに頬を上気させているティア。
「それって、おまえであって、おまえじゃないんじゃないか?」とは言えずに、「よかったな」とだけ柢王は返した。
自分は最初から「守護守天」として会ったけど、確かに何も知らずに出会ったら一目惚れしかねない美少女に見えたよなー、と思い出し、
「あの(記憶力皆無の)アシュレイが未だに忘れられないなんて、よっぽどだよなあ」と加えてやった。
ティアは更に幸せそうな顔で微笑み、うっとりと膝の上の寝顔に視線を戻した。
「で、ティア。おまえの初恋は…って聞くまでもないか…」
すっかり2人の世界に浸っているティアには、そんな言葉も聞こえてないようで、柢王は一人グラスを傾ける。
柢王は、幼い時から守護守天という重責を担っている親友の安らぎである、口下手で人間関係に不器用だけど、素直で正義感の強いもう一人の親友の気持ちが、友情から愛情へ変わる日が近いと良いなと、心から思う。
そして自分にも、そんな気持ちになれる相手が早く見つかると良いな、とも…。

<ティア17歳>

幼馴染の親友ティアと2年ぶりに交流が復活はしたものの、うっとりと蕩ける様な目で見つめてきたり、唇をぶつけてきたり、愛してるの何のと聞くに堪えないような言葉を何度も…と、どうも以前の親友と勝手が違い、戸惑う日々のアシュレイ。
かつての親友(自分的には今でも親友だが、向こうは恋人と言いたがる)は妙なやきもちを妬くのでリアクションに困ってしまう。こんなヤツじゃなかったはずなのに…。
今日も今日とて…
「アシュレイってば、リスのことはあんなに撫で回すのに、私には撫でてくれない…」
「だーっ。なんでてめぇを撫でなきゃいけないんだよ!」
「じゃあ、撫でなくて良いよ。その代わりこうやって髪の中に手を入れてくしゃくしゃって..」
「うるさい!」
と、不毛な会話が続いている。
「はあ〜。そういや柢王は人間界に行くんだよな〜、俺も一緒に行って暴れてえ」
溜息をつきながら、アシュレイは遠い目で窓の外を見る。
「ダメだよ、まだ、体が完治してないんだから。もうしばらく…、一緒?」
言葉尻を捉え、急にティアの目と声がきつくなる。
「君、私より柢王と一緒がいいの?そうだよね…子供の頃だって、柢王にはずいぶんスキンシップとってたよね…。頬に触れたり、抱きついたり、腕や足に唇を寄せたり….」
「へ?な、何の話だ?」
ティアが青白い炎を纏った様に見え、アシュレイは思わず後ずさる。
「こうやって頬に触れてたじゃないか!」
ティアは肘を90度に曲げるとそのまま水平に振り回した。
「うん、いいフックだ。じゃねえ、それは殴ってるだけだろうが!」
「それに抱きついて転げまわったり!」
「そりゃ取っ組み合いだ!」
「こうやって唇寄せて!」
ティアはアシュレイの腕を掴むとそっと食んだ。
アシュレイは慌てて振りほどくと「噛みついてたんだー!」と怒鳴った。
「私にはしてくれないのに…!」
「できるかー!」
守護守天であるティアは禁忌がかかっていて、人をなぐったり傷つけたりすることができない。だから自分もティアには暴力はふるえない。
が、先日も結界膜に囚われた時、ずいぶん殴ってしまって今更だし、つまらない話を延々されて、相当ストレスも溜まってる。
「いや..、今ならその望みかなえてやっても良いぜ…へへ…」
アシュレイはゆらりと一歩踏み出す。今度は彼の方に青白い炎が見えるようだ。
「ア、アシュレイ…?」
ティアはひきつった笑みを浮かべながら後ずさる。
「…濃厚じゃなくて良いからね・・・?できれば寝台での『取っ組み合い』が希望なのだけれど…」
アシュレイのどこかで「プチ」と何かが切れた音が、ティアには聞こえたような気がした。


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