投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
マンションの台所で桂花はお弁当を作っていた。
「桂花〜。ちょっとエプロンの中脱いでみねー?」
柢王の手が桂花の肩口に伸びる。
ペチッ!
「もう何してるんですか!朝っぱらから・・」
「いや〜。後姿がそそるっつーか。」
「ほらほら。もうすぐ猿達が来ますよ。」
ピンポーン
「おーい。柢王、迎えに来たぞー。」
「柢王、桂花、お待たせしました。」
今日はフグ田家と波野家の新婚カップル同士、海水浴に行くことになっているのだ。
ティアが運転するレンタカーで、4人は勝○海水浴場に到着した。
この海水浴場は、比較的こじんまりして、きれいな砂浜が広がる穴場なのだ。
この辺の情報は、事前にナセル(じんろく)から入手済みだった。
海についた一行は、さっそく水着に着替える。
アシュレイも桂花も、この日の為におニューの水着を用意してきた。
アシュレイは、キャロットカラーのセパレートで、フリルスカートを合わせている。
サザ○ヘアとあいまってとてもかわいらしい。
「おかしくないか?ティア・・」
「とってもかわいいよ!アシュレイ。」
一方桂花は、白雪色のシンプルなデザインだが、背中や胸元の刺青が美しく露出されている。
腰には棕櫚の柄のパレオを纏っていた。
「サイコーに色っぽいぜ!桂花。」
「・・・///」
ランチを済ませた後、体を焼き終えた柢王は、桂花をゴムボートに乗せて、海でまったり過ごしていた。
アシュレイは泳ぐのを止めて、パラソルの下で寛いでいるティアの元に戻ってきた。
「ティア、暑くないか?アイス買って来てやるよ。何味がいい?」
「ありがとう、アシュレイ。じゃあバナナ味を頼む。」
「わかった。じゃあ行って来るな!」
「人が増えてきてるから気を付けてね。」
「すみませ〜ん。バナナ味のアイスを一つ下さい。」
「うちにはバナナ味は置いてないんだよー。」
アシュレイは隣の海の家に向かう。
「バナナ味のアイスありますか?」
「ごめんねー。バナナ味はないなー。バニラの間違いじゃなくて?」
「すみませーん。」「うちはバニラしかないよ。」
バナナ味を探す内に、ふと気付くと見慣れない景色が広がっていた。
知らぬ間に隣の海水浴場まで来てしまっていたのだ。
「彼女〜、一人?」
アシュレイは二人組みの男に声を掛けられた。
「いや、4人で来たんだけど、迷っちゃったみたいなんだ。」
「ぼくらも4人なんだ。向こうに二人いるから一緒に仲間を探してあげるよ。」
「ホントか!」
───その頃
「どうしよう柢王!アシュレイがアイス買いに行ったきり戻らないんだ。
海の家にもいないし・・。」
「どうせ迷ってるんだろ。俺が連れ戻してくるさ。ティアと桂花はここにいろよ。」
アシュレイは、男達に持て囃されながら、‘隣の海水浴場’でティア達を探していた。
「一緒のお友達も君みたいにかわいいの?」
桂花のことかな・・?
「うーん。桂花はかわいいっていうより、きれいかな。スタイルがいい。」
男達は、目配せして小さくガッツポーズを作っている。
「おい、アシュレイ!」
「あ、柢王!ちょうど戻る所だったんだ。アイス見つからなくて・・。」
柢王はアシュレイの腕を引っ張り、肩を組んだ。
「俺の連れに何か用か!」
「ちっ、なんだ〜。男連れかよ〜。」
男達は立ち去って行った。
「全くお前は警戒心が無さ過ぎるな。ティアが心配してたぞ。」
「ごめんな。わざわざ迎えに来させちゃって・・。」
その後二人は和気藹々と肩を組んだまま、ティアと桂花の元に戻った。
「アシュレイ!大丈夫だった?怖い目に合わなかった?怪我はない?」
「ごめんな、ティア。バナナ味見つからなくて・・」
「君が無事戻っただけで十分だよ!」
ティアはアシュレイに抱きついて、しきりにその存在を確かめている。
「───柢王。ずいぶん猿と仲がよろしいようで。」
「へっ。いや、あれはだな。変なやつらにアシュレイが引っ掛からないようにだな・・。」
「そんな人達、いないようでしたけど?」
「いや、向こうにいたんだよ。そのまま、話が弾んでだな・・。
桂花〜。すまんっ。機嫌直してくれよ〜。今日の夕飯は俺が作るから。」
「今日は外食でしょう?」
「じゃあ欲しがってた鍋買ってやる!」
「ル・クルーゼですよ?」
もちろん桂花は本気で疑ってはいなかったが、
たまにはこんな柢王もかわいくて、もう少しだけこのままでいよう、と思ったのだった。
END
Powered by T-Note Ver.3.21 |