投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
ねえ。私は君が好きだよ。
人界のあの島国を覚えている? あの国は今ちょうど夕方だ。海が真っ赤に染まっているよ。まるで君の髪と瞳のようだね。
君は今、隣の大陸にいるけれど、元気でいるだろうか。君のいるところはまだ、昼間かな。
君が悲しい思いをしていないか、それが心配なんだ。カイシャン――柢王の生まれ変わりを見ていて、泣きたくなったりしていない?
人間の寿命は短い。こちらの時間で一年も経たないうちに、その人生は終わってしまう。でも、どうか彼を哀れまないで。
私たちの親友は新しい命になって、今の生を精一杯生きているはずだよ。柢王がそうだったように。だから私はカイシャンを可哀相に思ったりはしないと決めた。柢王の魂だったら、そんなふうに思うなって言うと思うからね。
でも、ちょっと心配ではあるよ。ここから見ているだけの私と違って、君は彼のすぐそばで見守っているんだろう。優しい君は、カイシャンがつらい目にあっているときに、それをただ見ているだけでいることができるだろうか。そうしなければならないということが、君を苦しめたりしないだろうか。
・・・たまには戻ってきて。そうすれば、私は君を抱きしめてあげられる。もう柢王も桂花もいなくて、時々、世界に私たち二人だけになってしまったような気がするから、そんなときは無性に君を抱きしめたくなるんだ。それにね、君に抱きしめてほしい。――私も少し苦しいんだ。
あのころとは、何もかもがずいぶん変わってしまったね。私はもうずいぶん、許せない相手が増えてしまった。・・・その中には君の父上も入っている。
遠いよ。あのとき君と人界で抱き合ってから、どれだけの月日が経ったというんだろう。たったこれだけの時間で、なぜ世界はこうも大きく、残酷に変わることができるんだろう。・・・変えることができるんだろうね。
誰もが泣いているような気がするのに。
君も、何度も泣いてきたのに。それなのになぜ、何一つ、優しいほうへ変わってくれないんだろうか。
――私も、君に秘密ができてしまったし。
ねえ、それでも、君は怒るだろうか、呆れてしまうだろうか。・・・逢いたいよ。
もう私の心も体も、闇を知ってしまっているけど。それでも逢いたい。触れたい。お互いの境目がなくなるほど抱きしめてしまいたい。誰を悲しませてもこの心を貫きたいと、そう思う自分がいるんだ。
君は優しい人だから、そんな私を軽蔑するだろうか。
君に嫌われたくはないのだけれど。
好きだよ。
愛している。君を。
――愛してる。
そう思うことをどうか許して。
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