投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
ある冬の日のこと。
朝からきびきびと家の掃除をしている桂花に向かってベットの中から柢王が話しかけた。
「なぁ桂花、今日はいつもより寒いな。」
「そうですか?吾にはいつもと同じように思えますけど。」
桂花はそっけなく答える。
「い〜や、今日は絶対寒い!!だから…」
「?だから何です…ってちょっと!!」
柢王は桂花の腕を掴むとベットの中へと引っ張り込んだ。
「いきなり何をするんですか、あなたはっ!吾にはまだ掃除がっ…」
そんな桂花の抵抗も柢王の大きな体であっさりと押さえ込まれてしまう。
「いいからいいから。寒い日はこうやって恋人同士であっためあうって昔から決まってんだよ。」
「何が昔から、ですか!柢王、離して下さい。」
「だ〜め。」
そんな柢王の態度に桂花の体からも次第に力が抜けていく。
そしてそんな桂花を満足げに、世界で最も愛しい者を見るような優しい瞳で柢王が見つめる。
柢王の胸の上に頭を乗せるようにして抱き締められている桂花の耳には、一定のリズムで音を刻む柢王の鼓動が聞こえた。
(こんな瞬間を『幸せ』というのだろうか…)
桂花は心地よい鼓動を子守唄にゆっくりと瞳を閉じた。
次に目覚めた時には柢王の、愛する人のぬくもりは無かった。
「夢…?そうか、柢王がここにいるはずがない。」
そうひとりでつぶやく。
だけど。
あるはずの無いぬくもりを桂花は心の奥に感じていた。
そう、愛する人の胸に抱かれた時と同じ暖かさを。
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