投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
『 昨日の私の告白、なかったことにはさせないからね 』
そう言って不敵に笑った幼なじみは完全に開き直ってしまった。
スキンシップが日増しに過剰になっている気がするのはけっして勘違いなんかではないと思う。
ティアのことは嫌いじゃない。嫌うどころか大好きだ。
でもそれは・・・・・友人として、幼なじみとしてのことだと・・・思う。
肩を抱かれたり後ろから抱きつかれたり、強引に手を引かれたり。人前でなければ自然と受け入れられる。だけど・・・・・。
「・・・・・はよ」
用があって、先に登校していたティアがアシュレイに気づいて席を立つ。
「おはよう・・・・珍しいね、風邪ひいた?」
今日も朝から多くのファンにウットリとため息をつかせた秀麗な顔が、口の中で飴をころがしながらアシュレイの顔をのぞき込んできた。
「のど飴か?俺にも1個くれ」
「あ・・・ごめん。私もさっきもらったんだ」
「ちぇ。買ってくりゃ良かった」
アシュレイが席につくとティアがその机に両手をついて唇をつきだしてくる。
「―――――なんだよ」
「あげる」
「いらんわっ#ボケッ!!」
真っ赤になって怒鳴ると、教室中の視線がアシュレイに集中した。
「冗談に決まってるじゃない、ここは教室だよ?」
ティアはおかしそうにクスクス笑いながら自分の席へ向う。
(くそーっ、またやられた)
あれからティアは、この手の悪質な冗談をしかけてくるようになった。
マサカと思いつつ、つい本気で怒ってしまう自分はなんだか余裕がない感じでみっともない。くやしい。ティアをギャフンと言わせてやりたい。
爪をかみながら背筋の伸びた後姿をにらみ、何かイイ手はないかと考えていると、隣のクラスの担任が1時間目が自習になることを知らせにきた。
歓声があがり、女子はさっそく仲の良いグループでかたまり始める。
アシュレイの隣の子も移動しようと席を立った。
「あ」
彼女の手から落ちた小さな巾着を拾ってやると、お礼だと言ってキャンディをひとつ手渡された。
「のど飴じゃないのか・・・ま、いっか」
さっそく口に放ると甘い香りが広がる。
アシュレイが包み紙を捨て戻ってくると、ティアが自分の前の席を陣取っていた。
「なに食べてるの?いい匂い」
「いちごのアメ」
「カバンにあったの?私にもひとつ、ちょうだい」
口の中にまだ小さなアメが残っていたけれど、アシュレイと同じものを口にしたくて、ティアは即座にかみ砕く。
しかしアシュレイは目の前に出された手をぺシッとたたき、わざとらしい口調で「ごめん、俺もさっきもらったんだ」と、ティアに言われたセリフを返してきた。
「誰っ!誰がくれたのっ?」
ムッとして詰め寄ってくるティアから面倒そうに顔をそらしたアシュレイにビビッと天啓が。
(そっか!そーゆーリベンジがあったか!)
ここは教室。クラスメイトがいっぱい。
アシュレイはニヤリと笑い、ティアに向き合うと唇をつきだした。
「・・・・・・な、なに・・・・?アシュレイ・・・」
ティアの目が微妙に揺れている。
「やるよ」
アシュレイの言葉に目を見開き、完全に驚いた表情をしたティア。
(ヨシッ!勝った♪)
アシュレイは心の中でガッツポーズをキメた。
「冗談に決まってるだろ、ここは教――――???――ングッ!?」
ガシッと両頬を固定されたかと思ったら、あっという間になにかが入ってきて苺キャンディごと絡めとられてしまった。
アシュレイはあまりのことに思考停止。
「これで君も私のもの」
『 キャ――――――――――ッ♪♪♪ 』
黄色い悲鳴が響きわたったと同時に、椅子ごとひっくり返ったアシュレイは、脳震盪をおこしそのまま保健室送りとなったのだった。
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