投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
「う〜・・」
痛む腹部をさすってアシュレイがうめいている。
《まだ痛むのか。守天殿に治してもらったんじゃなかったか?》
「夕べはよくなったと思ったんだ、でもまた・・ィテテ」
《また守天殿に手光でも当ててもらえばいい》
「あいつ今、会議中だ」
《なら我慢だな。ここで下手に俺が治して、守天殿の怒りを買うのはゴメンだ》
「〜〜〜〜氷暉の弱虫・・・・うぅ〜なんか、寒くなってきた」
鈍痛に顔をしかめ、アシュレイはベッドに深くもぐりこんだ。
それからしばらくの間「使えねぇ奴だ」とか「冷血魔族」とか、言いたいことを言っていたが、やがてその独りごとが止み、辺りが静かになる。
様子を見ようと氷暉は彼の汗と共に外へ出た。
《寝たのか》
鼻がつまっているのか口で息をしている顔は紅潮している。呼吸も速く、胸が大きく上下していた。
《かなり熱が上がってきたな》
守天でなくても、使い女が来てくれれば・・・・いや、彼女たちは呼ばない限りこの部屋に入ってくることはないだろう。
サイドテーブルに置いてある水差しから、氷暉はひとくち分の水をアシュレイの口元へ運ぶ。
「・・ん」
ほんの少量、注いでやると焦れたアシュレイが赤い舌を出して催促してくる。
「もっと・・・くれよぉ・・・」
《待て、少しずつだ。慌てて飲むと咽る》
氷暉がそう言うと、不満そうに口を尖らせたもののアシュレイはこくりと頷いた。
勿体をつけるつもりなどなかったのだが、意識の朦朧とした彼が、水が欲しいあまりに自分の言うことをきくのが面白く新鮮だ。
《もっと欲しいか》
「・・・・くれ・・」
《ください》
「・・・くだ、さい」
気を良くした氷暉が再度水を含ませてやる。
アシュレイはわずかしか与えられない水に痺れを切らして半身起こそうとしたが、すぐに倒れこんでしまった。
《無理をするな。ホラ、もうひとくちだ》
ドサクサに紛れその熱い唇を盗んだのだが、当の本人は全く気づかない。当然といえば当然のことだろう、水なのだから。
それをいいことに、氷暉は何度も彼の唇に触れた。
《―――――もういいか?》
「ん・・・・・カキ氷食いてぇ・・・」
《腹痛のくせに何を言ってる》
分かってるけど食いたい。とぼやいて、アシュレイはそのまま小さな寝息をたてはじめた。
無防備な寝顔を見つめていた氷暉は水差しの横に置いてあった手巾に水を浸すとアシュレイの額にのせてやる。
看病をするなど、久しぶりの事だった。昔は水城の具合が悪くなった時こんな風に面倒を見ていたが。
『・・・水城・・』
「・・・・だいじょぶ・・・俺が・・・朱光剣で・・・・・」
起きていたのか?と、驚いて顔をのぞき込むが変わらず寝ている。
『まったく、お前という奴は』
破顔して、氷暉はそのままティアが戻ってくるまでアシュレイの枕もとにいた。
1時間後。
「アシュレイ!また具合が悪くなったの?!・・・・熱があるね。気づかなくてごめん・・・・ああ、すごい汗。枕までビショビショだ―――――すぐ楽にしてあげるから着替えようネ♪」
嬉々としてアシュレイの服を脱がしにかかる守護主天に、なんとなく胸がむかつく氷暉なのであった。
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