投稿(妄想)小説の部屋

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No.595 (2005/10/05 14:59) 投稿者:

冥界策謀

 霊界の、更に地深きそこには妖異でありながら美麗な男、『冥界教主』がひっそりと存在していた。
 彼は天界の守護主天を欲している。
 そもそも冥界教主はなぜ守護主天が必要なのか。
 その理由を知るものは多くはなかった。

 痛む・・・・・・
 ここ数日、どうしようもない痛みが頭部を襲っていた。
 眷属どもに悟られぬよう無表情を保ってはいるが、我慢の限界はすぐそこまで来ている。
 掌に嫌な汗をかきつつ、彼は頭をそっとおさえた。
 黒い水に体を浸しても、一向に痛みがひかないことなど初めてだった。
「教主様」
 涼やかに響く女の声に少しだけ焦りの色を見せる。
 この女は侮れない・・・。
 気づかぬフリを通しているが恐らくこちらの様子など疾うに気づいているのだろう。
 だが、そういう鋭い洞察力も密かに気に入っている。
「李々か」
「はい・・・・・教主様、差し出がましい事承知の上で申し上げます」
 下げていた頭を上げると、教主の足元まで音もたてずに近づいた。
「失礼いたします」
 いきなり教主の九つある兎の耳のような器官をつかんだかと思うと、李々はすばやくそれらの中を覗く。
「ッ!!」
「こちらです、酷く膿んでおりますゆえ即刻切開して膿みを出さねばなりません」
「〜〜〜ック、はっ、離さぬかっ!!」
 あまりの痛みに、無体なことをする李々の細い腰を蹴り飛ばした。
 彼女は転がりながら、器用に体制を整え平伏するとチラと顔だけ上げて教主を見据えた。
「放っておけば酷くなる一方かと」
「・・・・・」
 激しい痛みに堪えながら、教主は青褪めた顔で恐ろしいものでも見るような視線を李々に送る。
 李々は素早く立ち上がると、教主の器官をまたもやグイと引っ張った。
「ヒィィッ! やっ、やめんか!」
 今がチャンスとばかりに、李々は日頃の恨みを込めてぎゅうぎゅう縛り上げる。教主はあまりの痛みに失神寸前だ。
「ご決断を」
「そ、そなたに、ま、任せるっ・・・・万が一・・・失敗などしたら―――」
「御意」
 李々は、わめく教主に最後まで言わせず、思い切り器官をひねり上げた。
「〜〜〜〜」
 哀れ教主は全身を痙攣させながら白目を剥いて大人しくなった。

 目が覚めた教主は、全く痛みがないことに気づき上機嫌だ。
 頭上にはピンクの包帯が巻かれていたが、また李々に患部を触られるのが嫌で文句も言わずに黙認している。
「湯浴みの支度を」
「教主様、湯浴みはお控えください。こちらの湖も、あと数日は控えていただくことになります」
「なんと!?」
「この湖は清浄とは言い切れません。また炎症をおこしてしまう恐れがございます」
「うぅむ・・・・・・何か良い方法は・・・おう! 主天殿だ――――ご多忙な方ゆえすぐにとは行かぬだろうな・・・・・多少手荒になっても良い、守護主天を攫い、一刻も早くこの湖を浄化して頂く!」

 斯くして、冥界教主の『守護主天強奪計画』の幕は切って落とされたのであった。


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