曼珠沙華〜終章〜
「柢王、それは?」
花街警護の帰り道、桂花は柢王に訊ねる。
「綺麗だろう?」
柢王は握っていた赤い花を差し出す。
花街警護の押収品だ。
「曼珠沙花?それも魔界のですよ」
「ああ、花粉はとったから害はない。そうだろ?」
確認を取る柢王に「ええ」と頷く。
「なんか、この花懐かしいんだ。変だろ?花なんてどれも同じに思ってたのにさ」
桂花は少し遠くを見てから静かに告げる。
「李々が好きな花でした」
この上なく優しい顔をした桂花に柢王は苦笑を浮かべる。
そして花を桂花に手渡すと、その腰に腕を回し引き寄せた。
「やっぱ、花よりこっちの方がいいな」
外でベタつかれるのを嫌う桂花であったが、何故か甘えたくなり柢王に身体の力を抜き寄り添う。
柢王は嬉しそうに口角を上げ桂花をしっかり抱えなおすと疾風のごとく帰途につく。
曼珠沙華の柔らかな香が一瞬二人を包み込み、そして消えていった。