雪の日の一枚の絵
雪が降っていた。
ひらひら舞い落ちる白い花びらはただ静かに地面へと落ちてゆく。とてもきれいな景色だった。ふと目をやると、その景色の中に一人の男性が佇んでいるのに気が付いた。その人は舞い落ちる花びらをじっと見上げているだけで、体が濡れることも気にも止めていない様子だった。
「忍、どうした?」
「二葉、あの人がね、なんか気になってさ」
寒いのに、あいかわらず雪はやんでないのに、傘も差さずにただ見上げているだけ・・・。
「なんか、きれいな光景だな」
二葉が呟いた。確かにきれいだった。雪とあの人が一枚の絵の中にいるみたいで。その人がはかなげな、触れたら溶けて消えてしまいそうな感じで・・・。
「風邪引きますよ? これ・・・どうぞ。」
思わず、自分のマフラーをその人に差し出している自分にびっくりした。そしてあせった。
(変な人だと思われたらどうしよう!)
「・・・ありがとう。でも大丈夫です。あなたこそ、風邪をひいてしまう。ちゃんと首に巻いてくださいね?」
少し驚いていた様子だったけど、微笑んでそう言ってくれた。
すごくきれいな人だった。そしてすごく悲しそうな人だった。
「あ、僕忍っていいます。こっちは二葉です。」
何を話していいのかわからなくなって、とりあえず自己紹介をしてみた。ただ変な人と思われるのはやだし。
「はじめまして、穐谷といいます。」
これが、絹一さんとの出会いだった。