Q.
テーブルの上に散乱するのは昨夜の名残り。
琥珀の液体が僅かに残ったグラスと、ゲームの終わったカード達。
テーブルの周りには弟とその恋人、従弟に親友。
気心の知れた人達が眠りについている。
「……。」
バラバラに散らばったカードを集めていた一樹の手がふっと止まった。
指の先にはハートのQ。
そして傍には1枚の小さなメモ。
カサリと開けば、几帳面な忍の字が問いかけてくる。
それはきっと、彼の優しさ。
ずっと訊きたくて、それでも訊けずにいただろう事柄。
『返事はいりませんから。』
忍の声を思い出し、一樹はメモをくしゃりと握った。
ほんの数行の短いQ.
――…ねぇ、一樹さん。
幸せは、求めすぎてはいけないなんて。
誰が貴方に教えたの……?