義務
この人が幸福だった時があるのだろうか、知恵と知識の塊のような人、魅惑な紫水晶の瞳ですべてをあきらめたように見つめる人、自分の知らない過去では幸福だったのだろうか、あの男の『柢王』という男の前では幸福だったのだろうか、一度だけこの人が声を出して泣くのを聞いたことがある。地の底の宮殿のあの部屋で、あの男のいるあの部屋であらん限りの声を出して泣いていた。
「寧、何を考えている。おまえは大都の様子を報告しにきたのではないのか?」
「申し訳ありません。」
この人は本当に優秀だ。指揮官としてこの人ほど部下をうまく使う人はいないだろう。
「いつまで地上に留まるおつもりですか?」
「冥界教主様に人間の時で100年の時間をもらってある。それまでは地上に居るつもりだ。」
人間の寿命は短い、この人の思い人の魂を持って生まれたというあの若者の寿命もあっという間につきるだろう、それでもこの人の気がすむのなら自分はこの人に従って地上に留まり、あの若者ことをこの人に報告しつづけよう。