投稿(妄想)小説の部屋

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No.458 (2002/07/07 00:02) 投稿者:彼方

七夕の再会を・・・

 何となく、深夜に目が覚めた。
 何かあった日のような気もするが・・・何にもない日にも思える。
 明け方近くの夜の空気の中、すっきりとした感覚で目が覚めた。
「あぁ〜あ。もう少し眠れたのにな。ま、目が覚めちまったんだし・・・しょうがないか。」
 大きく伸びをして背筋を伸ばす。
 俺が地上界に降りて魔族退治をして地上では1年が過ぎた。
 その間、ティアには遠見鏡を通しての会話しかしていない。
「何してるのかな? あいつ・・・」
 ふと空を見上げると、夜空に輝く星が見える。
 天の川にある無数の星の密やかな瞬きに地上界の物語を思い出し・・・ティアに逢いたくなった。
「久しぶりに逢いに天上界に戻ろうかな?」
 魔族退治にも一段落の兆しも見えてきてる。
 報告がてら天主塔によってティアの様子を見て来たい・・・
 思い立ったら吉日とばかりに近くに居た兵士に告げると、その足で天主塔に向かった。

 天界では・・・
 ティアが執務室で遠見鏡を見つめていた。
「あぁ、今日は地上は七夕か・・・」
 アシュレイを探すつもりでみた景色に無数の星が瞬く川を見つけた。
 まさか、同じ時刻にアシュレイが同じ星空を見てるとは思わずに・・・
 逢いたいと思う同じ気持ちを抱いてるとは気付かずに・・・
「今日は織り姫と彦星の再会する一年で一度の日・・・ アシュレイ・・・君に会いたいよ。」
 遠見鏡に軽く頭を預け、小さくつぶやく。
 そのつぶやきが愛しい彼の元に届くように・・・
 少しでも同じ思いを抱いてくれていますように・・・
 そんな願いを込めて、つぶやきの言霊が君に届きますように。

「あ、見えてきたな。もうすぐ天主塔だ。ティアの奴、ビックリするかな?」
 目の前に迫ってきた天主塔の前で一旦止まり、ティアの部屋の窓を見る。
 ほんのりとランプの明かりがついている。
「あいつ、こんな時間にも起きてやがる。」
 軽く舌打ちをしてから明かりの見える部屋に向かい飛び、窓の前に降り立つ。
 コンッ。
 窓を珍しくノックをしてから返事を待たずに窓を開けて中に入る。
「ティア?」
 目を閉じて遠見鏡に頭を預けた姿のまま考え事をしていたティアは慌てて声のした方を向き、そこにアシュレイの姿を見つけ眼を見張った。
 幻か? 自分で考えていた願望が叶ったのか?
 自分で見た物が信じられない。
「ティア? どうしたんだ?」
 アシュレイが近づき頬に手を伸ばすと、その手が捕まれた。
「アシュレイ? 本当に本物のアシュレイなのか? 私が見ているのは幻じゃないのか?」
 現実に手をつかんで確かめても信じられなかった。
 逢いたいと思っても会いに来てくれず、遠見鏡での逢瀬もつれない恋人が今、目の前にいる。
「何だよ、ティア。俺に決まってるじゃん。今日は・・・」
 言葉を最後まで言わせて貰えなかった。
 言葉の途中で力一杯に抱きしめられる。
「だって、君はなかなか会いに来てもくれない。幻と疑っても仕方ないじゃないか。」
 拗ねた口調でティアはアシュレイの肩に顔を置き気が済むまで抱きしめ続けた。
「ちょっ・・・苦しいって、ティア。」
 たとえ傷つけることの出来ない守護主天とはいえ成人男子の力で力一杯に抱きしめられたらさすがに苦しい。
「あ・・・ごめん。でも、どうしたの。今日は・・・」
 少し力を緩めて(離す気は無いらしい)突然の訪問に抱いた疑問を投げつける。
「いまさ、地上界で七夕なんだ。魔族退治も一段落ついたし、だから・・・」
 さすがに改めて聞かれると照れくさくなったのか、言葉をたどたどしくしゃべる。
「だから? ・・・私に会いに来てくれたの?嬉しいよ。アシュレイ♪」
 満開の笑顔でティアはもう一度抱きしめる腕に力を込めた。
「ちょっ・・・」
「知ってる? 七夕は恋人同士の逢瀬の伝説。七夕だからなんて言われると・・・」
 クスクスと笑い、本来の調子を取り戻したティアはアシュレイの首筋に軽く唇を寄せ、悪戯を施す。
「オイ! 何をする気だ!」
 こちらも本来の調子に戻り、首筋から顔を引き剥がそうともがく。
 力負けで顔を離されたが、懲りないティアはアシュレイからは離れなかった。
「ねぇ、アシュレイ。・・・抵王達もこうして逢ってるといいな。」
 急に真面目な声で囁かれた。
「・・・あぁ、そうだな。いや、あいつらのことだ。きっと逢ってるさ」
 不意に悲しそうに全てを拒絶した桂花の顔が浮かんだ。
 そのあまりの寂しさの漂う表情に悲しくなり、ティアの背中に手を回し軽く力を込めて抱き返す。
「あいつらも幸せになれるといいな。」
 織り姫と彦星の話を思い出し、桂花と抵王を当てはめてしまう。

 どうか、天の川の流れが穏やかに・・・
 二人が会うのを邪魔をしないように・・・
 ティアに抱きしめられながら地上で見た天の川に願いを託して・・・
 一年一度の再会がかけがえのない思い出になりますように・・・
 星に願いを・・・


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