死が別つときも
電気もつけずに、二人で一枚の毛布を被り、とりとめのない話をする空間は居心地がよかった。
二葉の体温が服越しにじんわりと伝わる。
全身の力を抜き、二葉にもたれかかる。
俺はほっと息をついた。
そのとき、二葉が言った。
「なぁもし俺が死んだら、お前どうする?」
心臓が止まるかと思った。
なんでそんな残酷なことを俺に聞くのだろう。
俺は唇を噛んだ。
二葉が俺からいなくなる。
太陽みたいな金髪の髪が、俺を抱きしめてくれる腕が、髪の毛をなぜる指が、俺を見つめる強いまなざしが・・・なくなってしまったらっ。
それを思うだけで死んじゃいたい!
「わりぃ・・・俺が悪かったから泣かないでくれ」
二葉の指先が涙をぬぐう。
「・・・うっ・・・」
二葉は俺の体を引き寄せ、抱きしめた。
二葉の匂いに、よけいに胸が痛くなって、さらに俺は泣き出してしまう。
「ゴメン・・・もうこんなこと聞かないからさ」
「・・・っ」
「・・・たださ、兄貴のことを考えるとき、思ってしまうんだよ。もし俺が死んでしまったら忍はどうなるのかって、兄貴みたいになるのかって・・・」
俺は顔を上げて二葉を見た。
どちらともなく、瞼が閉じられた。
「悪いけどさ、俺、お前を殺してしまうかもしれない。俺がいなくなった後に忍が笑って、泣いて、怒って・・・そんな顔を誰かが見るのはいやだし、俺のことが過去になって他の奴の者になるなんて絶対許せねぇ。だからと言って、兄貴みたいになるのは論外だし・・・」
「・・・殺していいよ」
俺は笑ってしまった。
二葉の独占欲に、それを嬉しいと思ってしまう自分自身に。
脳裏に優しくきれいなあの人の姿が浮かぶ。
二葉がいなくなってしまったら、俺はあの人みたいになるのだろうか。俺と一樹さんは似ているとみんな言う。
でもそうはならない。
その前に二葉が俺を殺すから。
「あの世に行くときも離さないで・・・」
俺はプリーズと言った。
二葉がどうしても俺に頼みたいことがあるときに使う言葉。
離さないで・・・。
「ありがとな」
二葉の声に俺はうっとりと目を閉じた。