投稿(妄想)小説の部屋

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No.392 (2001/12/21 08:45) 投稿者:桜草

クリスマスローズ

 ---テーブルの上に置かれたクリスマスローズ、花言葉は『私の心を癒して』
 あなたは気付いているのだろうか、俺がこの花を持ってきた理由に---

 窓を開け放して一面白い世界となった外に目をむける。
「ホワイトクリスマス…か。」
 なんて、一人呟きながら薄暗くなってきた空を仰ぎ見て目をとめた。
 空から降りてくる雪…
 白いと思いこんでいた雪が空の色を少し溶け合わせた灰色になっている。
 そして、地上に降りたその一瞬だけその姿が本来の白になる。
 地上は鷲尾さん…あなたかな。
 そして、雪は俺…
 近づくにつれその肌に触れたくて、白い肌を露にする。
 すぐさまその体温に包まれたい…
 そう思い、思わせてしまう俺とあなたの関係に似てる。
「風邪ひくぞ。」
 ふと、隣に温もりを感じた。ただそれだけなのに意識して身じろいでしまう…
「何考えてんだ。」
 お見通しだと言わんばかりのその笑みに負けないほどの笑みを浮かべ
「何も。ただ…」
 あなたの首にまわした腕に力を入れる、それがこのあとに続く言葉。
 地上に降りる前、灰色のまま消える雪。
 それが、あなたに逢う前の俺。
 過ぎていく刻(とき)の中に心も身体もおいていただけの俺。
 そんな俺に差し伸べられたあなたの手…あの桜の木の下。
 振り払われても嘆くまいと精一杯虚勢を張った…
 もう失うものなど何もないから。
 そんな俺に気付いてくれたのは、あなた。
 灰色の雪のまま刻(とき)をさ迷っていた俺が地上に降り、白い雪になれた瞬間…
「窓閉めるぞ。」
「あっ、はい。」
「冷たくなってるな…」
「すぐに熱くしてくれるんでしょう。」
 俺は全身の力をぬきトンと彼に身体をあずけた。
 あなたの腕に苦しいほど強く抱き締められても、その拘束感が心地よい。
 クリスマスローズ
 その花言葉を知ってるかのような優しい手の中で静かに刻(とき)が過ぎていく…


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