Like a flower
風に散らされた花びらが、あいつの髪にまとわりつく。
俺の好きな色素の抜けた長い髪…
「さわるな…桂花は俺だけのものだ…」
「何をわめいてるんですか。」
「ん…別に…」
「まさか、この花びらに嫉妬した……なんてことはないでしょうけど、気が散りますから静かにしてるか部屋に戻ってください。」
『図星でしょ!?』という笑みをうかべ、あいつは一枚の花びらを紫微色の指先でつまみ俺の前に差し出した。
俺はそれを取り上げて『まさか』と言い返すかわりに、掌に置き息を吹きかけ風にのせる。
「花びらにはまとわりつかせるのに、俺は邪魔者扱いか…」
ため息とともに言葉にしてしまった想いに桂花は『クスッ』と笑い俺の頭を自分の胸に引き寄せた。
「何を拗ねてるんですか。吾はいつだってあなただけのものじゃないですか」
「…ならよ〜〜」
「吾は忙しいんです。」
「元帥の俺が暇なのに、なんでおまえが忙しいんだ…ん!?」
『ここにいる時ぐらい…』そう言葉を続けようとした瞬間、桂花の腕が首に絡みついて、俺の肩に薄紅色の花びらを一つ落とすと絡めた腕を外した。
「もう少しで終わりますから、いい子にしていてくださいね。」
今度は子供扱いか…
でも、まぁ、こんな日があってもいいか。
花びらの中の桂花は綺麗だし、時たま強く吹く悪戯な風が長い髪をもて遊んでよ、桂花がそれを手で煩そうに払う…そんな姿を大人しく見てるのもいいもんだな。あいつに髪を切らせなかったのもそんな姿が見てみたいと思ったから…
桂花は気づいているんだろうか。
俺がどれだけおまえを大切にしてるか…
どんなに愛しく想っているか…
微笑むあいつ、涙を流すあいつ、怒っているあいつ、寂しそうなあいつ、拗ねてるあいつ…
桂花のいやなとこなんてひとつもあっちゃいけないんだ。
だからよ、全て見逃すことなく知ってなくちゃならないんだ。あいつを一人占めするためにさ…
そう
「あんときの顔なんかも〜〜、痛っ…」
「吾はあなたのそういうとこが嫌いなんです。」
「桂花〜〜」
「用は済みましたから吾は先に部屋に戻りますけど、あなたはまだ花びらを見ていたいのであればどうぞ…」
「…俺は桂花を見てたんだぜ。花びらはおまけだ」
瞬時に頬を花びらのように紅くした桂花…
俺の一番好きな桂花だ。