続いて欲しい「幸せ」・・・欲しいものは何ですか?
「誕生日プレゼント、何が欲しいですか?」
訊けば「もう貰ったから」と返答された
まだ何も贈っていないけれど? と、問えば
「実際に 貰うのは これから」と言う
よくわからないままに その会話はそこで終わった
今日こそは きちんと訊き出そう、思いながらも
気づけば 誕生日当日になってしまっていて
特別な用意もできないまま鷲尾の部屋へと向かった
「今日は 早いお帰りだな」出迎えられ部屋へと通される
「すみません、俺が何か料理でもできる人だったら・・・」と言えば
「一緒に 誕生日を迎えてもらえるだけでいいさ」と言われた
食事を済ませ、貰ったという年代もののワインに酔いしれた頃合い
「きちんと答えてくださいね」と 絹一は切り出した
「誕生日プレゼント・・・、何が欲しいですか?」
今日は 持参できなかったけれど、明日にでも一緒に 買いに 行って
それでも 鷲尾の返答は「もう貰った、って言ったのに」だった
「まだ見てはいないけど・・・、せっかくだから一緒に見るか」
言いながら 鷲尾は サイドテーブルに置かれたままの封筒に手を伸ばす
煙草を咥えたまま 中から取り出したもの、「写真、・・・ですか?」
鷲尾は その一つ一つに視線を走らせている、やがて一枚に目を止めた
「これなんか、いい表情だろ?」そう言ってその一枚を絹一に手渡す
渡された写真、そこに 思いもよらない自分の姿、
「え・・・?」
知り合いのカメラマンに頼んだ、と鷲尾が言った
「 写真なんて、言ってくれれば 一緒に撮るのに・・・」
被写体である 絹一自身が カメラに気づいていなかったため
どの写真も隠し撮り そのもの、カメラ目線ではない写真だった
「黙ってて悪かった・・・でも 普段の表情が欲しくて、さ」
「そんな、写真だけで いいんですか・・・?」と、問いかければ
鷲尾の返答、「どんな高価なものより、よっぽど宝物になる」
「それより 写真以上のもの・・・、絹一自身を貰えるっていうのか?」
笑みを浮かべた口元、近づいて耳元で囁かれて・・・
俺は もう、あなたのものだと 自分では そのつもりでいるのに
明日、アルバムを買ってこようか・・・、ふと考えた
俺と 鷲尾さんの写真だけを入れてください、と言って
そんな考えは 女みたい、かな? 感じた照れ臭さは今は隠して
お誕生日おめでとうございます、鷲尾さん
来年の「この日」には たくさんの写真と想い出が溢れていますように
そして 来年もまた、あなたの隣で過ごせますように・・・、
・・・・・・心のなかで そっと祈った・・・・・・