ジェラシー
「最近やけに色っぽくないか。ん!? 桂花」
色素の抜けた髪は俺の好みで腰あたりまでのばされてる。
その髪を桂花は水辺で剥いている。
俺の声に振り返ったけ桂花は朝焼けの中で輝いてた。
「色っぽいって吾がですか?」
上機嫌な俺の声とは全く違う不機嫌な桂花の声…はて!?
「言う相手を間違えてるんじゃないですか?」
「…はぁ〜!?」
「吾に隠し事は通用しませんよ。」
桂花は鋭い、風の流れに敏感だから香にも敏感なんだろうか…
なんにせよ、こんな色っぽい桂花に不機嫌は似合わない。
「わかった、わかった。降参!! だからなぁ桂花、機嫌なおしてさぁ…なっ」
「…やっぱり。」
「やっぱりっておまえ…まさか?」
まただ、桂花の得意とする誘導尋問だ。まぁ、何度も引っかかる俺も俺だけどよ…
「信用ねぇな。」
「どう信用しろって言うんですか…毎回、毎回…」
仕方ない。
俺は桂花を引き寄せる。
俺のペースに引き込まなきゃヤバイって桂花を怒らすと大変なんだよな。
ところが…だ
「柢王…その手にはもうのりませんよ。あなたと一緒にしないで下さい」
ってさ、俺の手からするりと抜けてっちまった。
そもそも桂花の怒りの原因は…夕べの花街だな。
でも、いつになく度をこしたこの怒りの原因は…俺にもわからない。
「おい桂花…」
「なんです?」
「どうしてそんなむきんなって怒ってるんだ!?」
桂花は俺を睨みつけてる。
でもよ、わかんないもんはわかんないんだよな。
「あなた、子供がいるって本当ですか?」
「こ…こども〜!?」
そーいやそんなこと言って絡んできた女がいたっけ…でも、ありゃ、ただのお遊びだぜ。
「後継ぎができてよかったですね。」
「まっ…まて! 落ち着け桂花。あれはただの…」
「そう言われたんですよ。」
「言われたって…誰に!?」
「花街では有名らしいですよ。」
うそだろー。
たった数十分のおふざけが、花街中の噂になって、桂花の耳に入って…いったい、どうなってんだよ。
って俺が真剣に頭を抱え込んだとき、桂花がクスクス笑いだした。
「桂…花…」
おいおい、ショックのあまりおかしくなっちまったのかよ。
「柢王…冗談ですよ。」
「あん!?」
「いつもいつも吾を一人にして花街になんか行くから、仕返しがしたかったんです。」
あながち嘘ではないにしろ、悪ふざけにも限度がある。
けどよ…
俺を見てる桂花の目みてたら怒れなくなってな。
淋しい思いさせてたのは事実だし…
「桂花、悪かったな。」
俺は桂花の髪に手をすべらせ、そのまま唇にもっていった。
かすかに震えるその唇にに俺の想いをおくりこんでやった。
「…柢王…」
「ん!?」
言葉をつまらせてしまった桂花。
言わなくてもわかってるって…
「愛してるぜ、桂花。」
いつも以上に、はにかんだ桂花の体をそっと包み込んでやる。
悪ふざけも裏を返せばやきもちだよな。
「なぁ、桂花…」
「却下です。」
「俺、まだ何も言ってないぜ」
「あなたの言いたいことなんか…どうせまた…」
「やきもちやいた桂花も可愛いぜ!!」
「…柢王」
こんなに可愛いなら、もっとやきもちやかせてやろうかな…
なんて考えたとき、桂花が俺の頭を叩いたのは言うまでもないか。
「本当…鋭い奴な、おまえって」
「あなたといれば、誰でもそうなりますよ。柢王」
ちょっぴり拗ねて、ちょっぴり照れてる桂花の笑み。俺だけに見せてろよ。
なっ! 桂花…