煙草
灰皿のふちにトン、と音をさせて灰を落とす仕草がきまっている。
次の煙を吸い込むまで、ほんの少し間を置くのも。
新聞を読みながら、ほんの少し考え事をしながら。
煙草を咥えるまでのほんの一瞬、薄く唇を開くのも。
ゆっくりとすい込んだ煙を吐き出すときが、なんだかため息まじりのようで。
彼の息使いをそっと数えてみる。
眠ったふりをしながら、肩にもたれて、ゆっくりと上下する筋肉の動きを感じてみる。
12・・・・・・13・・・・・・14・・
そこまで絹一が数えたとき、鷲尾の長い腕が肩に廻された。
そのまま頭を顎の下に抱き寄せられる。
反対の方で、煙草をもみ消す気配。
「こうしててやるから少し眠れ。」
憎らしいほど、甘えさせ上手なかれはずっと大人で。
「はい・・・。」
きっと、いつまでもかなわない。