たとえばこんな忍の日常
最近は、昼食をとるために生徒会室に、パンやおにぎりを持参していくことが多くなり、そのまま五時限目が始まるまでそこにいて、暇つぶしをするのが当たり前になってきた。
昼食であるクロワッサンをかじりながら、いつもと同じ顔ぶれである朝井、伊田を眺めた。
一人になりたくて行く生徒会室のはずが朝井は必ずついてくるし、伊田も必ず一年の教室から走ってくる。
廊下は走ったら駄目だっていつも言っているのに、俺を見つけたら駆け寄ってくるんだ。
そろそろ一人になれる新しい場所を見つけなきゃな〜と思いながら、ふと、思い浮かんだ疑問を伊田にぶつけてみた。
「伊田、夕食とかっていつもどうしてるんだ?」
伊田は帰国子女で、小沼のために一人で日本にきて、今は一人暮らしのはずだ。
三人ともめいめいに好きなことをやっていたので俺の突然の質問に、二人からちょっと驚いた顔を向けられる。
「いつも、適当にコンビニとかファミレスで済ませてますけど・・・。・・・(ちょっと考えて)・・・一人なんで寂しいですよー! 一人で飯って寂しくありません?」
そうだなー。一人で食事ってのも結構、寂しいものなのだ。
小沼や二葉に出会うまでは、寂しいだなんてちっとも気づかなかったのに・・。俺っていつも気づくの遅いんだよな・・。
「・・・うん、そうだな・・・。」
確か、朝井は母親働いてないって言ってたから、一人じゃないはずだよな。
「えー、池谷先輩はいつも夕食どうしてるんですか?」
「俺? ・・・俺も最近は(二葉となかなか会えなくなったし)一人でコンビニかファミレスかな。」
「なんだー!! 奇遇ですね! そうだーこれから一緒に食べましょうよ!!」
「え?」
固まってしまった俺のすぐ横から
「俺も。」
という声がした。
声の主は、今まで黙って聞いていた朝井だった。
「えぇ!?」
いくら、一人が寂しいからって、誰でもイイなんてことはないぞ!!
パニックになっていた俺が返事をしないと、伊田が寂しそうに上目使いで、
「帰っても誰もいないし・・・池谷先輩が一緒に食べてくれると嬉しい
なぁ〜。一人暮らし寂しいよなぁ〜。俺、友達いないし・・・。」
と言ってくる。
そこを突かれるともう、駄目だとは言えない。
一人の寂しさは、イヤと言うほど二葉に教えてもらったから・・・。
嫉妬深い恋人の顔が浮かんだが、まるで確信犯のような伊田に渋々、承諾を出すしかなかった。
こうして、朝井、伊田と三人で夕食を食べるという奇妙なことになってしまったのだった。