投稿(妄想)小説の部屋

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No.84 (2000/08/06 03:29) 投稿者:レオン

新たな足音

 寝ぼけた状態で隣に手をのばす。
 しかし、そこにいるはずの人はいなく、変わりに少し離れたところから苦笑交じりの声が聞こえる。
「大丈夫。ここにいるから。」
 低いが、優しく暖かい声。いつもこの声に守られてきた。

「絆をもつな」という李々の言葉を信じた自分を、この男は簡単に壊したのだ。
 離れたくない、いつまでも側にいたい・・・・。

「おい、桂花。どうした。」
 そう言って、目を閉じたままの桂花の隣に寝そべる。
 天界にきた当初、敵の中での生活への恐怖と、柢王の自分への想いへの途惑いに苦しんだ。
 イヤ、それは今でも変わらないのかもしれない。自分は魔族で、柢王は天界人だ。
 未だに周りは敵だけ。しかし、今の桂花の1番の恐怖はそんなことではなくて・・・。
「なぁ、腹へったな。そろそろ起きるか。」
 しかし言葉とはうらはらに、何も言わない桂花を抱きしめ離そうとしない。
「誰かに何か言われたか?」
 突然声の様子が変わる。この人はいつもこうだ。
 柢王は桂花の髪を玩びながら囁くように言葉を続ける。
「桂花。大丈夫だ。守ってやるから。俺が側にいるから。」
 欲しい時に欲しい言葉を必ずくれる人。
 1番の不安。それは、いつまで柢王と一緒にいることができるのかということ。
 あなたは本当にずっと吾の側にいてくれるのですか。
 目を開けたときに、吾の横にいてくれるのですか。いつまでも。ずっと。

「・・・・・か。けいか。」
「んっ・・・・・・。ていおう・・・・。」
 少しづつ意識がはっきりしてくる。夢?
 柢王はこんなところにいないし、桂花をよぶことはできない。柢王は冥界にいるのだ。
 光が眩しくゆっくりと目を開ける。目の前にいるのはもちろん柢王ではない。
「カイシャンさま。すみません・・・。」
「桂花、夢を見てたのか。柢王って奴の夢を見てたのか。次からは俺のこともだせ!」
 少し興奮している。嫉妬だろうか。自分の前世への嫉妬。思わず苦笑がもれる。
 しかし予想してなかった彼の次の一言に、驚き動けなくなってしまった。
「次の夢は俺のことも出せよ。そしたら、桂花のこと絶対に泣かせない。側にいてやるから。」
 桂花はそこで初めて気付いたのだ。自分が涙を流していることに・・・。


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