Promise〜愛してるといってくれ〜
「二葉!」
叫んでから俺はちょっと後悔した。
道を聞かれて答えようとするのを邪魔してしまったみたいだ。
何とも気まずい空気が流れる中、二葉は俺を見つけるとすごく嬉しそうな顔になった。
相手に手短に答えると、すぐに走り寄って来てくれる。
…あーあ、道を尋ねるのは口実だって、どうして気づかないかなぁ。
女の子2人が未練がましそうにこっちを見ている。
何となく、声をかけて悪かったかなと思う。
「よっ、めずらしいな。こんなトコで会うの」
「そう?」
昨日も会ったばかりなのに、コイツは日に日に格好良くなっているみたいで、今、となりを歩いているだけでも内心ドキドキしてしまう。
でもそれを悟られたくなくて、わざと冷たくふるまう自分に思わず笑ってしまう。
「ん?何笑ってんだ?」
「ううん、何でもない。ところで二葉は何か用事?」
「いや、ただちょっとヤボ用で…。もう済んだんだけどさ」
言いながら二葉の様子がそわそわしたものに変わる。
何だろ?何か変なこと言ったかな?
「あ、あのさ、忍…」
何かを決意したように急に立ち止まる。
「何?」
二葉が言いよどむってことは俺にとって悪いニュースなのかな、って考えてたから、次の言葉には本当にびっくりした。
「俺と、ロスで一緒に暮らさないか…?」
「!!…」
あんまりびっくりして声も出せずにいる俺に、二葉は本当に真剣な顔で言う。
「もちろん今すぐってわけじゃない。大学も決まって卒業してからの話さ。おまえトレバー達と会った時、本気で留学のこと考えてたじゃん? 俺も忍にはあっちの大学の方が合うと思うんだ。二人ならなんとかなるし。だから…」
二葉の俺を見る目に迷いなんてなかった。
「だから一緒に暮らそう。」
本気なんだ。本気で俺と…
「忍?」
うつむいてしまった俺に心配そうに声をかけてくる。
…俺、二葉のことが大好きだ…
何故だかそれを伝えたくて、下を向いたまま人目もかまわず、二葉の手をそっと握った。そして
「…愛してる」
精一杯の思いをこめて返事をした…。
…それから数年後、俺達の新しい生活が始まる…。