投稿(妄想)小説の部屋

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No.40 (2000/06/11 14:53) 投稿者:きーさん

恋の闇路 その1

 暗い暗い闇の道を、何処までも何処までも歩いてきた。
 この道とも言えない闇の道は、永遠に続くのかと思われた。俺はもう、そう信じて疑っていなかったんだ。
 その時、ぼんやりとした光を感じて、うつむきながら歩いていた俺は、ふと目をあげた。
「え・・・?」
 俺は思わず目を見開いた。
 どうして今まで気が付かなかったんだろう。
 目の前に、古ぼけた、でもがっしりとした大きな橋が架かっていたんだ。橋は薄青く光っていた。
「何時の間に・・・?」
 首をかしげながら俺は橋のすぐ前まで走った。
 黒光りする手すりに触ってみる。
 ひんやりと冷たい。
(ちゃんと触れるじゃんか)
 当たり前のことなのに、俺は何だかほっとした。
 自分以外の物に触れるのは、一体どれくらいぶりだろう。この世界に入ってから、どれくらい経つのだろう。
 もう分からない。
 何も分からない。
 俺はどうしてここにいるんだろう。
 何度も何度も考えた疑問。
 答えが出ることはなかった。
 誰も答えてはくれない。
 ここにいるのは俺一人だから。
「・・・・・たい・・・ょっ」
 俺は拳を握り締めた。
 涙が溢れて止まらなかった。
(帰りたい)
 あの家に帰りたい。
 お互い忙しくて、少ししか一緒にいられなくても、しょちゅう喧嘩しながらあいつと生活してたあの家。
 健さんを待ってることができたあの家に。
 俺は橋の前で、ひざを抱えて号泣した。
 もう何度目になるかも分からない、感情の爆発だった。


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