日本妄想昔話 『桃太郎』
キャスト……芹沢兄弟
「…夫婦役だな(含み笑い)」
「バッ…!『兄弟』に直してあるだろっ!!変な事言うなっ!!!」
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むか〜し昔(?!)ある所に、貴奨と慎吾という兄弟が住んでおりました。二人には血のつながりはありませんでしたが、それなりに仲良く暮らしていました。
よくできた超絶二枚目の兄と、しっかり者の可愛い弟は近所の娘達の憧れの的です。
そして、ある日。
貴奨は山へ芝刈りに、慎吾は川へ洗濯に出掛けました。
「冬はツラいけど、春先になってくると水に触るのも楽しいよな〜。家事って、気の持ち様で楽しくなるもんなんだな…」
そんな健気な事を言いながら、慎吾が洗濯をしていると……何と、上流から大きな桃が流れてきたのです!
「えっ?!うわ、桃だっ」
慎吾は目を真ん丸にして眺めていましたが、それが自分の方へと流れてくるのに気付き、ふと思いました。
「(最近あったかくなってきたし…夕食の後にでも冷やしたの出してやったら、あいつ、喜ぶだろうな…)」
そうこうする間に、桃はすぐそこまできています。この分だと、手をのばせば届きそうです。
慎吾は膝をつくと、思い切り身をのりだし……
『 ザッパーーーン!!! 』
……川へ落ちてしまいました。幸い浅瀬だったので、濡れただけで済みましたが…もちろん、桃は下流へと姿を消していました。
先に帰っていた貴奨は、扉の開く音に振り返り…ずぶ濡れの慎吾を見て、慌てて駆け寄りました。
「どうした!その格好は?!」
「川に落ちた…」
多分、怒られるだろうな…と思っていた慎吾は、言葉少なです。
「馬鹿、風邪でもひいたらどうする!」
貴奨は慎吾を抱きよせ、服を脱がせようとします。
「なっ、よせよっ、何すんだよ!」
「いつまでも濡れた服など着てるなと言ってる!」
「やめっ、自分で出来るって!よせってばーッ!!」
力強い腕に抱きこまれ、少々パニック気味にジタバタする慎吾。
貴奨はそんな事にはおかまいなしに、上着を脱がせてしまいながら、ふ…と口の端で笑いました。
「…お前の身体なら、もう知ってる。恥ずかしがるのはもう少し色気をつけてからにするんだな」
「〜〜〜ッ!!!」
慎吾はみるみるうちに首から耳まで真っ赤になり、大声で叫びました。
「お前!信じらんないっ!!何でそーいう言い方……ッ!!!」
「信じなくていいから、はやく脱げ」
もちろん、兄の方は少しも動じていません。
「あっ馬鹿!やめろってば…ッ…」
既に声にならない悲鳴をあげながら、着ているものをはぎ取られていく慎吾。
……この兄弟は『それなり』どころではなく『めちゃめちゃ』仲が良い
……という、お話でした。