海の人 (1)
「なんで、こんなことになったんだ」
どこかで、誰かの怒鳴るような声がきこえてきた。声からいくと、俺の兄貴と同じぐらいかな?
「だって・・・しかたない・・」
今にも消えてしまいそうな、小さな声で反論している声をきこえてきた。
この声は、どこかできいたことがる声だ。そうか・・、これってたしか、「慎吾」とかいうあの?
「しかたないで・・お前は、海に落ちたりするのか」
落ち着いてはいるのだが、ちくちくととげのはらんだ声だ。なんともいいがたい、威圧感がかんじられてくる。
「だって・・」
「だって???だって、なんなんだよ」
その言葉を最後に二人は黙りこんでしまった。
俺は、どうしたらいいもんかと目を閉じたまま考えていた。
「おきたみたいだぞ、お前の命の恩人は」
「えっ、あっよかった」
起きていたことがばれたのか、こちらに二人してよってくる足音と声がきこえてきた。
安堵した声のほうをうっすらとあけた目でみてみた。
おもった以上に室内であろうそこの照明は眩しかった。
目を細めながら、ゆっくりと目がなれてくるまでまった。
そうるると、そこにいたのは・・どうみても女の子だろうと思う子と、これまたみたことがないくらいに美形の人がたっていた。
なんと言葉を発したらいいのかと、頭の中で考えていると・・その女の子らしきこが、声をかけてきてくれた。
「大丈夫ですか???ここ、どこだかわかりますか???」
「・・・・・病院??」
「はい、そうです」
俺が答えると少年(声からいくとそうだろう)は、パァーとまるで花が咲いたように笑った。
「君は??怪我なかったの」
「・・・はい、おかげさまで」
体が丈夫なことにかけては自信があったので、どうしてもさきに子の子のことを心配してしまった。
そういうのも、海の中で抱きしめたこの子の体ときたら、なにを食べたらこんなになるのかというくらいに細かったからだ。
「弟が、助けてもらってすいません」
そういって、その子(慎吾)の後ろから一人でてきた。多分、この人はさっき、この子と言い争いをしてたひとだ。
「いいえ、そんな」
「慎吾ちゃんとおれをいってから・・・わかってるな」
「わかってるよ、貴奨」
慎吾は、そういって自分よりも大きなその貴奨という人を睨みあげた。
「それじゃあ、俺は・・仕事にいくからな」
「わったよ」
それだけを言い残して、貴奨なる人物はさっさと部屋をでていってしまった。
「・・・お兄さん??」
「・・・はい、そうです」
急に俺に、声をかけられて驚いたのか慎吾ははっとした顔をしていた。
「・・・・」
「・・・・・」
二人してなにを喋っていいのかわからずに黙ったまま、時間が少しずつすぎていった。
「あっ」
「??、なに」
「看護婦さんに・・あなの名前をきいておくようにっていわれてたんです」
自分の失敗が恥ずかしいのか、慎吾は真っ赤になりながら下をむいてしまった。
「あー、名前ね。???免許証とか、なかった」
「はい、それが・・なにもなくって」
うつむいたままになってしまた、慎吾は小さな声で答えるだけであとはなにをいわなかった。
「そっか」
「あっ、これに書いてください・・僕がちゃんともっていき、ますから」
そういって、慎吾は白い紙を俺のほうへとさしだしてきた。
「わかったよ。じゃあ」
名前 相澤 遊戯 18歳 学生
以下略。
書いた紙を渡すと慎吾は、まるでにげるようにして部屋をでっていってしまった。
なんでか、おかしくなったおれは慎吾がいなくなってから大笑いしてしまった。