投稿(妄想)小説の部屋

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No.196 (2001/03/04 00:33) 投稿者:Shoko

『世界の童話:眠れる森の美女』

 昔々、あるところに、王様の江端さんと王妃様の健さんが仲良く暮らしておりました。
 長年そのお二人にはお子さまがなく、大変淋しく思っていたのです。

 けれど、王妃様のお百度参りが叶い、とうとう可愛らしい姫がお生まれになりました。
 姫は慎吾と名付けられ、国をあげて盛大なお祝いが開かれ、色々な人がお祝いに駆け付けたのです。

 その中に、魔女の聖也さんがいました。聖也さんは健さんにある想いを寄せていたのですが、
 いつも健さんに一蹴されて悔しい思いをしていました。

 その健さんの愛情を一身に受ける慎吾姫が聖也さんはおもしろくありません。
 他の魔女達がお祝いの言葉を姫に授ける中、聖也さんは呪いをかけたのです。

「慎吾姫はそれはそれは美しく優しく育つだろう。だが16才の誕生日に糸巻きに指を刺して死ぬのだ!!」

 呪いをかけ終わった聖也さんはカラスに姿を変え、高笑いと共に飛び去ってしまいました。
 もともと身体の弱かった健さんは呪いの言葉を聞いてあっけなく死んでしまったのです。

 まだお祝いの言葉を言っていなかった魔女・高槻さんが言いました。
「糸巻きに指を刺したぐらいでは死にませんよ。長い眠りにつくことにしましょう。運命の人と出会うためにね」

 江端さんは国中に糸巻きを処分するようにおふれを出しました。
 国中の糸巻きが集められ、江端さんの目の前で燃やされ、処分されたのです。

 江端さんは健さんの忘れ形見として慎吾姫をそれはそれは目に入れても痛くないほどに可愛がって育てました。
 そして、慎吾姫の16才の誕生日。

 いつもは閉ざされている北の塔への扉が開いています。
 慎吾姫が中に入っていくと見たことのないものがおいてありました。

「あれ? これ、なんだろう」
 糸巻きを初めてみた慎吾姫は誤って指を刺してしまいました。
 すると魔女の高槻さんが言ったとおりに慎吾君は眠りに落ちてしまったのです。
 慎吾姫が眠ったとたん、国中もまた深い眠りについたのでした。

 それから数百年。
 勇者が何人もやってきましたが、誰一人として姫を助けることはできませんでした。
 かつての城の周りにはイバラが生い茂り、そう簡単には城には近付くことができなかったのです。

 そこへ通算何十人目かの勇者がやってきました。
 それも右と左の道から一人づつ。

一人は勇者・健(健さん=二役)。そしてもう一人は勇者・貴奨。
 イバラの前でばったりと出くわしてしまった二人。
「またアンタか…」
「それはこちらのセリフだ」
 どうも二人は顔見知りのようでした。

「なんで貴奨さんがいるんスか?」
「君こそなぜいる。姫は私がお助けする。君は引っ込んでいたまえ」
 イバラの中に入って姫を助けることができるのは一人だけです。
 けれど、勇者は二人。…一人、余り。

「そういうわけにゃいかねーな。アンタこそ引っ込んでな」
「いや、私が助ける」
「いや、俺が」
「私が」
「俺が」
「私が」
 ……どちらも譲りません。

 一方、お城の中ではなかなか助けに来ない勇者を待ちくたびれて慎吾姫は起き出してしまいました。
「もう、そんなこと言ってないで早く助けてよ〜。寝てばっかりいるの、俺疲れちゃった…」

そんな姫の思いをよそに、健さんと貴奨さんはいつまでもイバラの前で睨み合いを続けていました。
 一触即発という緊張感があたりに充満し始めた時、イバラの向こうに起きてきた慎吾姫の姿を見つけたのです。

「慎吾、なぜ起きてきた。こちらの都合も考えろ」
「そうだぜ、シン。お前が起きてきちゃ話が続かねーだろが。もっかい寝てこい」
 イバラを挟んで健さんと貴奨さんが慎吾姫にいいます。

「やだ」
慎吾姫はぷいと横を向いてしまいました。
「ただ寝てるのって疲れるんだよ。誰が助けに来るかわからないから、寝相だって気をつけなきゃいけないし…。
 それに健さんも貴奨も俺のこと忘れて見つめあってるし…」

「見つめあってねぇっ!!!」
「なぜ俺が向井君と見つめあうんだ!」
健さんと貴奨さんは同時に否定します。
 それからもう一度寝てこいという二人の勇者の説得を、慎吾姫は頑として受け付けません。

「必ず助けに行くから」健さんと貴奨さんに言われても、首を縦には振りませんでした。
「…しょうがねぇなぁ」
「仕方ないな」
 どちらがイバラを斬るのかで、一瞬二人は顔を見合わせましたが、
 同時に仲良く(?)イバラを伐採したのです。

「やったー! 外だーっ!」
 慎吾姫は数百年ぶりの外に嬉しそうです。
「健さん、貴奨、助けてくれてありがとう!!!」
 慎吾姫は二人に微笑んで、お礼を言いました。

 慎吾姫が目覚めたことで国中も眠りから覚めました。
 王様の江端さんも二人の勇者を前にとても嬉しそうです。
「姫を助けてくれたそうだな。礼を言うぞ」
「…勝手に起きてきたんだけどな…」
「ぜひ、お二人には長期滞在して頂きたい。国をあげてお迎えしよう」
「そこまでしてもらうのもなんだか気がひけるぞ…」
 健さんと貴奨さんのつぶやきをよそに、祝宴は1週間に渡って続きました。

 その後、二人の勇者は国に留まり、慎吾姫と健さんと貴奨さんはそれなりに仲良く暮らしました。
 が、少々困った癖が慎吾姫にはついてしまっていたのです。

 長年眠ってきたせいか、慎吾姫は中々眠りません。
「慎吾! いい加減寝ないかっ」と貴奨さん。
「シン、いーかげんにしろよ。こう毎日じゃ、俺だって怒るぞ!」と健さん。

「だって〜〜。眠くないんだもん〜〜」
 それからも慎吾姫の不眠は治らず、健さんと貴奨さんは慎吾姫に付き合わされ、
 極度の睡眠不足に悩まされたということです。


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