プレゼント
「ただいま」
疲れた身体をドサリとソファに投げ出し、貴奨はふと手にしたままだった紙袋を見つめた。
“喜んでくれるだろうか?”
たまたま帰り際に見つけたそのネクタイは、やさしい色合いの物で、慎吾によく似合いそうだった。
慎吾が20歳を過ぎたあたりから、彼に似合う物を見つけてはつい買ってしまっていた貴奨だった。
大人なのだから・・・、いつかは必要な時がくる・・・などと、自分に言い訳しながら。
今度も快く、受け取ってくれるハズだ。
しかし、貴奨の思惑は少々ハズれた。
「よりによって貴奨が、オレに、今日、くれんの!?」
慎吾の怪訝な表情に、わけが分からなくなる。
今日が、何だというのだ!?
「チーフには、あげないのかよ!?」
「高槻?」
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まったく、何だって言うんだ?
うらめしげにネクタイの入った包みを睨みつけたまま、慎吾はそそくさと部屋にひっこんでしまった。
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今日が、何だって言うんだ?
「ったく、バレンタインに弟にプレゼントなんて渡す奴がいるかよ」
そう呟いた慎吾の頬は、かすかに赤く染まっていた。