投稿(妄想)小説の部屋

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No.183 (2001/02/12 11:29) 投稿者:ミュウ

「ばれんたいん。」3
「一樹のバレンタインチョコレート講座」

 綺麗な人と言うのは桔梗とか一樹さんや双葉みたいな事を言うんだよ…。俺なんて…。考えれば考えるほどなんだか落ちこんできてしまった。
 バットに乗せたチョコレートを冷蔵庫で15分〜20分冷やす為に休憩に入る。
 一樹さんに入れてもらった紅茶を飲みながら、皆とは少し離れた場所で考え込んでいると絹一さんがとなりに座る。
「羨ましいね。桔梗君と忍君の恋人はこんなカワイイ二人から手作りのチョコレート貰えるんだから。」
「そんな事…。」
「ごめんなんか気に障るようなこと言った?」
 忍の曇った表情を見て絹一が謝る。
「いえ…違うんです。」
 そうは言いながらも気分は一向に浮上してくれそうにない。せっかく楽しんでいたのに、こんなんじゃいけない。
「いや…綺麗な人って言うのは絹一さんみたいな事を言うんですよ。」
 と無理やり作った笑顔で何でもないことのようにいう。ここで絹一さんに迷惑かけるわけにはいけない。
「そんな事無いよ…」
「え?」
 忍の作った苦しい笑顔に絹一も悲しそうな笑みを返しながら反論する。
「僕はあまりまわりの事が見えないんだ、今回のことにしたってここに来るまで、バレンタインが近いってことも、鷲尾さんにバレンタインのチョコレートを上げる事なんて思いもつかなかったんだから。初めて好きな人にチョコレートをあげられるのだって忍君達のお陰だし、恋人を思ってなにかしようとする気持ちって綺麗だと思うよ。」
「……そうかな?」
「うん。もちろん綺麗なの中には容姿を誉めた部分もあるけどね。忍君は綺麗だよ。」
 ニッコリ。
 と美人に最後に笑顔まで付けられて誉められて嬉しくない人はいない。
 実際嬉しかった。綺麗と言う言葉の中にそんな意味が含まれていたなんて、絹一さんて優しい…。綺麗と言われてまだ違和感も在るし納得はしていないけど、人から誉められたことはありがたく受けとっておこう。それは自分に対しての自信に繋げる物だから。
「ありがとう。」
 忍は自然に出てきた笑顔でお礼をいう。それを嬉しそうに見つめ絹一も微笑む。
「本当忍君の恋人は幸せだね。」
 そうでもないと思うが…去年とか忘れてたし。
 そう思っていてくれるのを訂正するのもなんだし、ニッコリ笑っておく。
 しかし聞き逃しそうだったけど聞き逃さなかった、「鷲尾さん」多分この人が絹一さんの恋人なんだろうな。
「絹一さんの恋人って鷲尾さんて人?」
「え、…恋人って言うか…大切な人かな…。」
 絹一の顔が真っ赤に染まる。
 なんだなんだ?つられて僕の顔も見る見る赤くなってしまう。でも絹一さんって可愛いなあ。
「僕のことは良いの。」
 顔面を手で覆いながら早口でいい、忍から視線を逸らす。
 二人して顔を赤くしている所に桔梗の声が掛かる。
「二人とも作業開始するってさ、何二人とも顔真っ赤にしてるのさ…。」
 忍と絹一はお互い顔を見合わせ更に赤くなってしまう。
 その様子を黙って見てた桔梗の顔が悪い事を思いついた時の顔になる。
「一樹!忍と絹一さんが浮気してるよー!。」
「な! なに言ってるんだよ!。」
 なんてことを言ったてもう無駄なような気がする。面白がっている桔梗の様子は明白だ。
 まったくも、僕達二人でなにがあるってのさ。絹一さんは少し驚いたよう顔の後、笑ってるし。
「いこっか。」
「……はい。」
 絹一に促され、少し嫌な感じが残りながらも作業場へと戻る。
 冷蔵庫からチョコレートを取り出し元の位置に戻り講座が開始される。
 これだけで終われば良いけど、後で双葉に変な事言わないかな…。それでやきもち焼き餅やかれるのが一番厄介だよ。まったく。
「はい、じゃ仕上げに入るヨー。それともここで辞めとく?なんか鷲尾さんと双葉が失恋するみたいだけど。」
「一樹さん!」
 全くもう。完全に面白がってるし。
「そんな事無いって分ってるくせに。」
「そ?さてとじゃ次いきますか。次にチョコレートを丸めて形を整えて。」
『はーい。』
「忍返事は?」
「…はい。」
 抗議を込めて返事をしなかったのだ無駄に終わったらしい。仕方なく素直に作業に取り掛かる。
「最後に丸めたチョコレートにココアの粉を振りかけて。」
 ココアの粉を振り掛けてと。
「はい、トリフチョコレートの出来あがり!。」
「おおおおおおお。」
 完成。
 後は可愛くラッピングして渡すだけ。以外と時間がかからずに簡単に出来あがった。良かった。
「はい一つ味見してみて。」
 そういって自分の目の前にある出来あがったトリフを一つ味見してみる。なかなか美味しいです。初めてにしては上出来でしょ。
「更に愛を深めたければそれにプレゼントをつけるもよし、そのままでも十分嬉しいと思うからいいけどね。」
『有難うございました。』
 最後は一樹先生に皆で挨拶。

 聖なるバレンタイン今年は皆愛しい恋人からのチョコレートが貰えてなかなか盛り上がるでしょう。                  
END
 一樹先生のチョコレートは?いずこへ?
「う〜ん。貴奨さんにでもあげようかな。あの人だったらすぐにお返ししてくれそうだし。」
 どうなったのでしょうか。


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