投稿(妄想)小説の部屋

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No.180 (2001/02/11 12:47) 投稿者:皇李 由貴

主天塔でのある日の出来事・2

 緊急の用がある!! そう呼び出されたから魔族でも襲ってきたのかと急いできたのだが………
 アシュレイの前には不気味なくらいに、にこにことした元親友、現恋人のティアランディアとその傍らで正反対に沈鬱な表情をした桂花が立っていて、手前のテーブルにはなにやら色とりどりの小さな玉が入った小瓶が置かれていた。
「で? 一体、何の用なんだよ、緊急なんだろ?」
 アシュレイは拗ねたようにそういって行儀悪くソファに座り込んだ呼び出しているときのティアがすごい剣幕だったから、とても大変なことでも起きてティアが危ないのかも!! なんて泣きそうになりながら任務を放り出してすっ飛んできたのに………目の前の恋人は瀕死どころかいつも以上に元気そうだった
 何か俺バカみてー……………………
「ゴメンっていったじゃないか、だってこうでも言わないとアシュレイってば仕事を放り出してまでここに来てくれないだろ?今日はどうしても来てもらいたかったんだよ」
 ね? だから機嫌なおして、とちょっと困ったように微笑むティア
 激務である彼の我が儘を聞けるのはお前だけなんだからたまには甘えさせてやれと柢王に言われたのはつい最近のこと。
 別に彼に言われたからではないけど、しょうがねーか、なんと言っても俺はティアの特別なんだから。
 自分だけに甘えてくるというのは何となくうれしいものだった
「別に……怒ってねーよ」
 そう言いながらそっぽを向く彼の顔が少しだけ赤い
 なかなか素直になれず、こんな風な言い方しかできない不器用だけど優しくて可愛いアシュレイの性格をティアはよく知っていた。
 うれしくて笑いながらありがとうといったら真っ赤な顔をした彼に「んなことはいいから、用って何だよ用って!!」と怒鳴られてしまった。
 そしてようやく本題に入る
「実はね、桂花が『飴玉』という人間界のお菓子を作ってくれたんだ。とっても甘くておいしいからぜひアシュレイにも食べさせたくてさ」
 へー、このビー玉見たいのって食い物だったのかぁ、とアシュレイは小瓶を手に取りそれをまじまじと見ている
(アシュレイが興味を持った! よし、そのまま一粒食べてくれ!!)
 守天は期待に胸が高鳴った。もちろんその飴玉には例の薬がちゃんと入っている。
 今か今かと守天が見ている前でアシュレイはあっさりと飽きた玩具のように小瓶を放り出した
「え………た、食べないの?」
 少し動揺しながら守天がそう聞くと、アシュレイは胡散臭そうに桂花を見た。
「えー、だってさー、これお前が作ったんだろ? ちゃんと食えんのか? なんかやばそうな薬とか入ってそうじゃん」
(す、鋭い!!!!)
 守天と桂花は瞬時に冷や汗をかいた
 味も匂いもわからないように調合したはずだ。
「や、やだなー、アシュレイってば、桂花がそんなコトするはずないだろう?あは、あはは」
「何かティア、変じゃないか?」
不思議そうに守天を眺めているアシュレイにすでに冷静さを取り戻した桂花が声をかけた。
「つまり………貴方は吾が作った物は恐くて食べれないというわけですね?」
 その言い方にカチンときてすかさずアシュレイは怒鳴り返す 
「んなわけねーだろ!! なんで俺がお前の作った物恐がんなきゃなんねーんだよ」
「だって現に恐いからそれを食べないのでしょう? 何か違いますか?」
「けっ、こんなの恐いわけねーだろ!!」
 そういって赤い色をした一粒を取り出すとそのまま口に入れてガリガリと噛みだした。
「ほら見ろ! ちゃんと食ったぜっ」
 ふふんと得意そうにしているアシュレイを見て守天はとりあえず胸をなで下ろした。
 よかった不器用で優しくて可愛い彼が単純でちょっぴりおまぬけさんでもあって………まぁそんなところもまた可愛いんだけど
 しかしそれだけでは終わらない
「あっれー、みんなそろって何してんだ?」
 なんだ、俺だけ仲間外れかよーと言いながらアシュレイに近づくのは桂花を預けて人間界に行ったはずの柢王だった
「これまた急なお帰りですね」
 桂花も驚いたようだ
「まあな、ちょっと報告しに来ただけだからまたすぐ行くけど………ん? アシュレイお前何食ってんだ?」
 アシュレイの持っている小瓶を見ながら柢王が尋ねた
「ああ?なんかしんねーけど人間界のお菓子だとよ、なかなかおいしいぞ」
「ふーん人間界ねー、桂花が作ったのか?」
 桂花の方を向いた柢王に何か言おうとしたとき
「んじゃ俺も一個くれv」
 柢王は素早い動きで瓶から青い飴玉を取り出すとぱくっと口に入れてしまった。
「「あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」
 守天と桂花は思わず声をあげてしまう
「? ……どうしたんだ? 二人とも」
 訳の分からない二人はきょとんと声をあげた二人を見返している
 ゆらりと桂花が柢王に近づいてきた
「どーした? 寂しかったのか?」と普段と違った様子にあわてて声をかけてくる柢王の首を掴むと桂花は思いっきりそれを振り始めた
「な、なんで貴方はそーなんですかーーー!!! 早く今食べた物を出しなさい、今すぐにっーーーーーーーー!!!」
 力いっぱいガクガクと首をゆらす彼の手を「ほ、ほんと死んじゃうから」と柢王は無理矢理引き離すとその後にすごい言葉を笑いながら吐いた
「わりぃ、今のでさっきの飲み込んじまった」
 桂花とティアが呆然としているなか、彼ら二人の変化は始まった
                つづく


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