お風呂あがり
家に帰るとなぜか、慎吾の姿を探している自分に気づく。
リビングと、慎吾の部屋。
人気がない。
ふと、かすかな水音でシャワーを浴びているのだと知る。
それだけで安心してしまう。
その瞬間、家に帰ってきてやっと落ち着くのだ。
「あれ? 今日は早いんだね」
タオルで頭をガシガシ拭きながらペタペタとやってきた当の慎吾は、そんな貴奨の想いなど知る由もない。
冷蔵庫からとりだしたペットボトルを一気にあおる。
水を飲むために少し傾けた慎吾の喉に、貴奨は一瞬釘付けになる。
水を嚥下するたびに動く、顎から喉のライン。
・・・ゴクリ、と音が聞こえてきそうなその動きに、思わず自分の喉も乾いてることに気づく。
舌で唇をなめ上げていると、慎吾と目があった。
「おまえも何か飲む?」
「・・・ああ、頼む・・・」
じっと視線を向けるとそらされる。
ホカホカと上気する慎吾の身体に、貴奨の体温も確実に上がっていくようだった。