投稿(妄想)小説の部屋

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No.142 (2000/10/18 22:10) 投稿者:MINO

車内会話

「なあ、兄貴?」
「どうしたの、いきなり」
 車に乗った時点で黙りこくっていた二葉が唐突に口を開いて、一樹は視線をナビシートへと流した。
「やっぱいいや」
「こら。そこで止められたら気になるだろう」
「だーかーらー、もういいって。そんなたいしたことじゃねぇよ」
「ふーん、忍のことなのに?」
 すばり、と言い当てられて二葉がずるりと前に滑る。
「座ってんのに器用だな、二葉」
「うるせえよ。なんで兄貴に分かるんだよ」
 それはお前が単純だから……とは一樹は言わない。
 ここのところ一樹の楽しみの一つはこうやって二葉をからかって遊ぶ事だからだ。
「なんでだろうねぇ」
 と言葉を濁せば、二葉は途端に顔色を帰る。
「まさか、またあいつ……」
「こらこら、憶測だけで物を言うのはよしなさい、二葉。で、またケンカしたのか?」
「兄貴には関係無い」
 憮然とした二葉の口からこぼれ出た言葉が終わらない内に、一樹は車の速度を落として脇へと寄せた。
「……兄貴?」
「関係ない、ねぇ……じゃあ関係つくってやろうか」
「ちょっと待てよ!」
「何? 別に俺は忍に手を出そうなんていってないけど?」
 ぐう、と唸って黙り込んだ二葉からあっさり視線を外して、再び車を発進させる。
「安心しなさい。俺の好みは可愛い子だけど、可愛がるだけだから。恋人にするにはやっぱりね」
 ちらり、と流される視線に、二葉は居心地悪げに体を動かす。
「なんだよ……」
「いや…………あんまり忍に無体なコトしてないか、心配だなぁ……なんなら実地で教えてあげようか?」
「余計な御世話だっ!!」
 間髪入れずに返された二葉の叫びに、車内は一樹の笑い声で埋めつくされた。


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