すれ違い
視察がなくなりそうだ、と言ったあと、守天が副長官の言葉を伝えると、桂花は信じられない、という顔をしていた。
彼にとって、この天界で自分が評価されるなど、考えてもみなかったことなのだろう。
柢王は、蒼穹の門に向かいながら、あのときの桂花の表情を思い出す。
くすぐったそうな、信じられないような、初めて見る顔。
あんな顔、自分は桂花にさせられない。
そう思うと、めったに感じることのない、嫉妬という気持ちが湧いてくる。
柢王は桂花を愛していて、いつまでも一緒にいたいと思っているし、守り抜きたいと思っている。だが、柢王がどんなに桂花を大切に思っていても、彼一人が桂花に与えてやれるものには限りがある。
綺麗で、頭が良くて、気がきいて。そんな桂花のことだ、もっと多くの人に認められていいはずなのだ。そうなったら、柢王は誇らしい反面、独占欲も湧いてくるだろうけど。
さっきの桂花の顔を見て思った。
もっとたくさんのやつに、こいつの真価を認めさせたいと。
きっとそれには、桂花が天界人ともっと関わらなければ、関わろうとしなければ駄目なのだろう。
そうやって認められれば、桂花もきっと、天界で生きていくのが楽になる。
柢王はそう思った。
そのためのことを、考え始めた。